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穂高連峰3

 さっそく最初の休暇は予定通り北穂高岳に向かった。去年知り会ったバイトの澤村響子《さわむらきょうこ》さんは、北穂高岳に居るバイトの子に今年も挨拶に行くので越村が付いてゆく。

 どうやらもう一人の女の子と一緒に行くつもりが休暇が取れなかった。前日にフロント横の食堂で、休暇の合わない二人を見付けて話を聞いた。

 この山荘で去年、気が合った東京の大学生、小淵沢伸也《こぶちざわしんや》は一足早く来ていた。彼が女の子が続けて来るなんて珍しく、その心境を知りたい所為《せい》もあって彼は一緒に行くつもりが休めなかった。それで越村が澤村さんと同行した。

 槍ヶ岳から南に天を突くように立ちはだかる屏風の尾根が続く稜線上の彼方に北穂高岳が見える。早朝に山荘を出た二人は途中の難所は大キレットだ。それまでも岩の瓦礫が交差するような歩幅ほどの道を走破する。大キレットに行くまでの南岳小屋で休憩した。此処は規模の小さいこぢんまりした小屋で顔を合わせて、一緒に行けなかった小淵沢に頼まれた用件を訊いた。

「去年一緒だった人から訊いたんですが、女性は身の回りのことが大変だそうですね」

 彼女はちょっとはにかみながらも頷いた。

「それなのにまた来るなんて、余程、此処の風景に魅せられたんですか」

「そうなの」

 と彼女は俄然、顔を輝かせた。

「だってそうでしょう。こんな世界を知らずに人生を終える人の気持ちが判らないわ」

「でも食わず嫌いで、山がいやな人も居るんですよ」

 これには、まあッ、と驚いて。一生損するとまで言わしめたこの人を、石塚に会わせたら面白いとふと頭に浮かんだ。


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