沙苗の出迎え2
石塚をひと月近く引き留めたかやぶきの里って一体何なのか。その原点を沙苗さんは追及している。石塚自身、感性が鈍いわけではない。ただ画家や僧侶に比べると掴むポイントがずれているのは、世間性や社会性の欠如から来るものだ。それを澤村さんが補っただけだ。そうさせたのはお互いを知ろうとする求心力に他ならない。それだけで、まだ愛とは呼べないだろう。それより問題なのは、弟の改善を思う沙苗さんが、越村の努力をどう評価してくれるかだ。
「とにかく僕は、石塚の実家からは一定の評価を得たんですね」
少しの沈黙の間に車は以前のスピードに戻った。
「今のところはそこに落ち着いてるけど、あんなバカなことを繰り返さなければね」
「彼女が居る間は大丈夫でしょう」
「その人、頼みなの?」
「人間、尽きるところはそこに集約されるでしょう」
それがなければ人類の繁栄はない。まあ大きく出たのねと笑われた。
車は篠のインターに近づいた。
「もう直ぐ九号線に下りないと、せっかくここまで快調に走っていたのに、一般道はちんたらして走りにくいのよね」
「高速もここまでですか」
そうよ、だからもうイライラさせないでね。と念を押されて車は市内の一般道に入った。
「家まで彼女を送ったのなら昼頃には帰って来るわね」
「どうかな〜あ、ユニバーサルスタジオジャパンがどうのこうと言っていたからなー」
エッ! と言うまもなく彼女はまたハンドルを叩き出した。
「そんな金ッ、誰が払うの!」
「最後はいつ振り込んだのですか?」
「そうか、祐司の奴、まだそれぐらいの金は持ってるなぁ」
「これからが二人の出発点ですから。石塚を潰すも活かすもこれからなんです。見守りましよう」
「あなたにそう言われると、どっちが身内か判らない」
と彼女は大きなため息をひとつ吐いて、西大路通を左折して北に上がった。




