石塚の帰郷2
「まあとにかく、うちの家族一同はあなたに頭が上がらないわよ」
彼奴は甘やかしすぎだ。と一瞬頭に浮かんだ。
「沙苗さん」
「エッ、何、改まって」
「今まで僕は石塚の家族について何も知らなかった。どんな両親なんです、ああ、そうだお母さんは此の前お会いして、いつもあんな感じ何ですか?」
「急に何を聞くの?」
日吉駅に差し掛かって車を止めて、ホームを眺めても石塚どころか人影はない。それを確かめて車はまた走り出した。
「今回の一件で石塚が我が儘すぎると思いまして……」
「そのように育ててないんだけど、ただ好きなように自由にはさせていたッ」
彼女は運転中の車のハンドルを急に叩くように操作した。
「でもそれは特別でも何でもないでしょう。おおらかな両親の元では良く有る光景だと思わない」
「子供の感受性の問題だと思うんですか」
「それもあるけど。祐司はそれほど多感でもないし、むしろ億劫で何もしないことが多いのよ」
車は園部から縦貫道に乗った。此処からはゆっくり話が聞けると沙苗さんは、弟が重い腰を上げた理由を聞いてきた。
「多分、いや間違いなく澤村響子さんの影響でしょう」
「そんなの分かり切ってるわよ。何故そうなったのか、抽象的過ぎてもっと具体的な決め手が判らなければあの子はまた堂々巡りをするでしょうッ」
越村の曖昧さに彼女は苛立っている。昨日の夜の九時過ぎに、明日帰ると越村は電話した。受けた沙苗さんは当然、弟の変化を訊かれて、澤村響子さんについて説明した。此の時はアッサリと聞くだけで電話を切られた。詳しいことは明日当人から聞けばいいと思ったようだ。それが待ち合わせ場所に居ない弟に対して憤慨している。やっと弟の重い腰を上げさせた越村には悪い印象はないが、半分は八つ当たり気味だ。高速に入ったのを幸いに「それで如何なの」と聞き出し始めた。
切っ掛けは夕べのひと言から始まった




