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来客の頼み1

 澤村は直ぐ石塚の部屋にやって来た。これに石塚は慌ててお茶を用意した。

「よかったらわたしがこのかやぶきの里を案内します。なんせ随分とここに居るから隅々まで詳しんです」

 この変わりように、越村は笑いを押さえるのに苦労した。

「そうね、でも毎年夏休みに槍ヶ岳にバイトに行くあたしにしてみれば、芦生の原生林ってどんな所か興味があって、そっちの方でもいいかしら」

 石塚もただならぬものを感じて心は穏やかでないのは解った。石塚の対応が楽しみになったが松枝さんが夕食の用意に顔を出して一瞬にして潰えた。少し早いがここまで何も食べずに来た澤村が頼んだ。

 松枝さんは次々と座卓の上に料理を並べ、三人は黙って料理が並べ終わるのを待った。澤村の申し出を断りは出来ないが、心の準備が出来てない状態で見ものだったのに、残念。

 ビールは昨日と一緒で三本ご用意しました。ではごゆっくりと松枝さんは下がった。座敷机に越村と石塚が向かい合って座り、角席が澤村で、コの字型に三人は座った。さあここからと、石塚は先ず澤村さんのコップにビールを注いだ。当然お返しにビールを注がれた。彼女はその手で越村のコップにも注いだのが石塚は気に入らない。まあそれでも今の三人は気持ちよく乾杯して料理に箸を付けた。

「大阪に帰るとクーラーを掛けないとやってられないのに、穂高では夜は毛布がいるわね。ここは如何《どう》なの?」

「此処は丁度いい。ただ夜は虫が来るから網戸はしっかり閉めないと、でもまだまだ冷えたビールが上手いですよ」

 と更にビールを進めてくる。

「穂高のビールはいいけど、つまみが干物ばかりで、そんなに呑めなかった」

 越村のひと言に彼女も同感だった。


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