新たな来客3
もう能天気なお嬢さんと女将さんから言われてしまった。これに石塚はスッカリ彼女が気に入ったようだ。しめしめと越村は胸を撫で下ろす。しかし手応は何もない。ただ意思表示がお互いの表情を通じて融合したに過ぎない。次のステップに繋がらなければ何の意味もない。
澤村は女将に促されて宿泊カードに記帳するのを、石塚は頭越しに覗き込もうとしている。越村が気になると、照れくさいのか覗き込むのを止めた。書き終わって振り向いた拍子に、彼女を紹介した。
「初めまして澤村です。ひょっとして石塚さん?」
石塚は何でこの人が俺を知ってるんだと怪訝そうに越村のを見た。
「穂高でこんな素晴らしい天空の世界を見せたい奴が居るって言って、お前のことを少し話したら彼女が乗ってきたんだ」
「一体此の人に何を話したんだ」
「今夜ユックリと夕食をしながら話してやるよ。ねぇ、女将さんいいでしょう」
「分かりました。それで今日は石塚さんのお部屋に今日も三人分の夕食をご用意するように松枝に伝えときます」
女将は館内の説明を兼ねて、澤村の荷物を持って部屋へ案内した。澤村の後ろ姿が消えると「俺たちは部屋で待つか」と動き出した。
越村に促されて石塚は気も漫ろに部屋へ戻ると、冷蔵庫内を見て矢っ張りお茶にするかと大きな座敷机の前に座った。
「いつ呼んだのだ」
「昨夜の風呂上がりに部屋が一つ、空きそうだから、来るかと連絡したんだ」
「昨日の常寂の挙動でそう思ったのか」
「そうだ」
「何故、判ったんだ」
「判りっこないだろう。ただそんな気がしたんだ」
これも穂高で天空の声を聞いているせいだろうと言えば、石塚は眉を寄せて腕組みをした。




