深山常弱2
「越村、お前の言うことは益々意味不明になってくる」
「石塚、お前は何の見返りもない登山に、意味づけできるか。それが解ればもっと考えに奥行きが出来る。人生は理屈じゃないんだ。考えるのでなく、五感を研ぎ澄まして感じるんだ。此処は感性を高めて磨くには絶好の条件を提供している。だからお前は長居をしている。違うか」
「そこまで考えが及ばないが、とにかく居心地がいいのは確かだ」
「じゃあ、そろそろ気持ちを改めろ」
「お前の訳の分からん話を聞いたら腹が減った」
「まったく。どうしてそこへ気分が飛んで仕舞うんだ」
「しかし空腹には勝てない。ここは一番端の部屋だから仲居さんの配膳まで待てない」
「無理を言うなッ」
「調理場に近い部屋に、俺とお前の料理を運んでもらえれば旅館側もひと部屋ごとに一人分の料理を配膳するより三人分まとめて配膳する方が楽だろう」
「でも酒を呑べばその会計はどうするんだ。それを考えると向こうも迷惑だろう」
「いや、独りで食べるより、たまに賑やかに食べたいとお誘いが来る時もあるんだ」
「そんな人いるのか?」
「それが居るんだ。今日辺りお呼びが掛かりそうだ」
そこへノックして一人の男が来た。
「石塚さんどうですか。今夜は独りで食べるより賑やかにやりませんか。おや一人増えたんですか。そちらはお友達?」
「誰ですか」
越村が訊ねて見たところ、どっから観ても観光客だ。
「今日話した和尚さんだ」
今朝、聞いたが、そんな雰囲気が全くない人で今更ながら驚いた。
「じゃあ紹介を兼ねてどうですか」
と彼は二人を自分の部屋に案内した。男の部屋に着くと早速仲居さんに連絡すると、二人を待たして男は部屋を出た。




