石塚と再会8
二人は若狭の鯖と美山のそばを組み合わせた物を注文して、品が載ったお盆を持って、二人は店内で空いている席を探した。さっき聞いた画家を見付けると彼の席に近づいた。彼も同じそばを摂取しながら快く相席を認めた。画家はどう見ても三十代後半だろう。髪はかなり伸ばして後ろで束ねていた。髪は短めにして頭の形に添ってまとめるのが普通だ。芸術家気取りでもない彼は身なりは真面でも矢張り得体の知れない中年男性に見えた。
「どうした掛川」
まずは石塚が声を掛けた。呼ばれた男は直ぐ隣の男を見やった。
「ああ、此奴は同じ大学生で越村洋樹って言う。で、此の人は掛川寛人。職業は自称売れない画家だそうだ」
「売れなくて大丈夫なんですか?」
動じない彼に、越村は異星人のように掛川を眺めてストレートに訊ねた。
「そうだなあ。越村が不思議がるのも無理も無い。掛川の実家は俺の家と同じように小さいが事業をやっている」
石塚は大学生だが彼はどうなんだ。
「見た所そこそこの歳だが働いてないんですか」
「働いている。ただ今は売れないだけだ」
そこに卑屈感はなく、掛川は俺の所為じゃあない。世間が認めないだけだと平然と言って退けた。
「これだけの心構えがないと芸術家は務まらないよ」
変な処で石塚はサポートした。
「まあきちっとしたスポンサーがいればね。そうかしっかりと支えてくれる奥さんでも居ればいいですがお一人ですか?」
「そんな野暮な人が居るわけないだろう」
それは石塚が決めるのでなく此の人だ。
「伴侶は野暮じゃないと日頃から言っているのは石塚だろう」
掛川さんも彼の矛盾を指摘した。




