石塚の姉9
「それでも石塚は、沙苗さんにだけは僕の事を詳しく伝えている処を見ると、彼奴は何か事が起これば僕に家族との橋渡しを期待してお姉さんに、俺にはこういう男がいると話していたのかも知れない」
「そうかも知れませんし、もしそうなら越村さんにそうして欲しいのですけれど」
中々ハッキリとは言えないのは何故だ。石塚は家族から愛想を尽かされているのか? そんなことはないだろう。父親は何も言わずに滞在費を出している。
「金を止めればいいとお父さんは言っていないんですね」
「それを強引に言ってるのは兄なんです」
「お兄さんと石塚はそりが合わないんですか?」
「あたしと違って年が離れている所為もあって、小さい時からあたし達とは距離を置いていたんです」
「早い話が、兄貴面して、あなたと石塚を頭ごなしに見ていたっていうことですか」
「ええ、まあそんなところです。その兄が今は会社の切り盛りをしているのに、弟がざるから水を溢すように大事なお金が旅館の費用に消えてゆけば、兄はいい顔するわけがない。父は二人とも可愛い我が子ですから、そこは大目に見ているけれど、それもゆくゆくは会社を任すとなれば、そんなにいい顔もしていられない。父はその岐路に立たされているんです」
「どれくらいの出費です」
「社員二人分の一ヶ月のお給料はもう越えてます。だから兄は苛ついているんです。誰がその金を工面しているんだと」
「それなら尚更、家族が会って説得すべきでしょう」
「それが難しいからあなたにお願いしたいんですが……」
弟は今まで黙々と親や兄への小言どころが一切逆らったことがない。そんな無茶をしたことがないだけに困って、あたしの話を聞いた家族から、あなたはその矢面に立たされていると言われた。




