石塚の姉8
「それもそうね。そこが気になるでしょうね。弟をもっと知らないと手の付けようがありませんものね」
どうせ親のすねかじりで親元を離れれば何も出来ないと父は思っていただけに、急に旅に出た弟を最初は支援していた。あちこち知らない土地を廻って見聞を広めていたとばかり思っていたが旅先からのお金の催促はいつも同じ場所だった。
「じゃあ一カ所に逗留していたのか。別にそれでも視野が広がっていいんじゃあないですか」
「それが長すぎていい加減かげにしろってなったの」
こうなればどっちが先に音を上げるか我慢比べだと最初はいきり立った。それがひと月以上も経てば、大学のこともあるし。留年はみっともないと父が音を上げた。時間に融通が利くあたしにお株が廻ってきたが、弟からあなたのお話を良く聞かされていたのを思いだしてあなたを探しに大学に行くつもりだった。
「そこへ私が訪ねてきたんですか」
「ええ、それで母もあなたに上がってもらいなさいと言ったのです」
「お母さんも僕の事は知ってるのですか」
「知らないと思う、最近になってお父さんから『祐司を何とかしろって言われて』その時に弟が腹を割って話せる友達が居るらしいとあたしが父に告げた」
母には寝耳に水で、お前その人を家に連れて来て欲しいと催促された処だった。
「そうか、これでお母さんとあなたの思いは判りましたが、人任せなお父さんは石塚をどう思っているのか」
「父はそれほど厳格な人じゃあない。どちらかと言うと、世間の経営者より人情味はあるが、仕事に追われるとそっちの方に気を取られて余程に行き詰まるまでは様子見に徹する人ですから」
「そうか、親は何が何でもごり押しするタイプでないのが石塚には救いですね。そこで私の出番ですか、以前からそんな兆候はあったんですか」
「ほとんど見られなかっただけに、家族の一員としては情けない話ですが、あなたの方が詳しいかも知れませんね」




