石塚の姉2
自宅には数回行ったが、家族が越村を憶えているとすれば、お姉さんの沙苗さんだ。家に居ればいいが、他の人なら押し売りか何かに間違えられそうだ。色々思案に暮れるうちに着いてしまった。キッチンシステムの販売を手掛けている自宅に見えないほど、ごく普通の家だ。それでも古風な作りなのは、此の当たりには昔は平安貴族や明治維新の功労者だった家が立ち並んでいた。石塚の家は小さいがそんな雰囲気があった。一応門柱はあるがそこから玄関まで数歩の距離だ。越村は恐る恐るインターホンを押した。どなたでしょうかと女の声がした。当たり前だ。この時間ではそろそろ夕飯の順次に取りかかる母親か、大学から帰った娘のどちらかだが、くぐもったインターホンの声では、性別以外の区別は難しい。
「越村といいます」
「あらッ、祐司のお友達の越村さん?」
越村以外に友達がいるのか?
「そうですが、あの〜、石塚祐司は大学に来てないんですが体でも悪いんですか」
言い及んでいるうちに玄関が開いて、膝丈ほどのプリーツスカートに清楚なブラウス姿の女性が出て来た。お姉さんの沙苗さんだと直ぐに判った。向こうも慌てて玄関に来てくれたお陰で、憶えていてくれたとひと安心した。
此の家には数回来ても石塚が彼を家に上げずに直ぐ外へ連れ出した。依って彼女とは、挨拶程度の会話だ。育ちの所為かこうして見るとお嬢さんぽい。もっともミッション系の大学と聞いている所為もあった。その僅かな印象からでも、今日の沙苗さんは尋常ではないと思えるほど驚いたのか精彩を欠いていた。
「どうしたんですか?」
思わず玄関に来た彼女に、越村が声を掛けるとハッとして、見詰められた。
そもそも顔見知り程度で、親しく話したことのない相手から、そう言われて彼女も返答に困ったのだろう。




