噛み合わぬ男2
顔で問題の出題箇所が判れば何の苦労はないし、何の為の試験だと言いたい。要は物事の本質を知ればテストなんて必要ないとあの先生はのたまってるのだ。
難題を引き出して物事の本質をややこしくしていると言いたいようだ。それでも石塚は欠かさず、すべての授業は受けていた。石塚には先生の教え方に拘りがあるんだ。人間の本質は持って生まれたもので、天才は存在しない。すべては努力の賜物だというのが彼の持論だ。
「それでテストなんかして何になるんだ」
教えたものを部分的に採り上げて出題する。そこを聞き逃したり、休んでいれば成績は悪くなる。逆にピンポイントで勉強したところばかり出れば成績優秀となる。
「それじゃあ丁半博打とどう違うんだ!」
と越村は怒鳴りたくなる。石塚にすれば浅く幅広く勉強して、適当に点を取っていれば良い。後は自分の好きなことをするために大学はある。
若者はこれから人生の花を咲かせる。此の理論なら「好きなことをするために大学はある」この石塚の言葉には頷ける。
「それでお前は何がしたいんだ」
「今の俺にないもの、それは女だ。だから恋に生きたい」
ハァ? 此の学食に居る連中と変わり映えしない。これには相手も居ないのにと越村は吹き出した。
「貶すな! お前も同類だろう。彼女がいないから毎年夏休みには山に籠もってるのだろう」
「お前と違ってあれは仕事だ」
「バカ言うな。仕事なら何も三千メートルの天界に行かなくても、此の下界になんぼでもあるのに、より依ってそんな苦行をしなくてもいいだろう」




