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さらば穂高1

夏休みが終わり秋になり、大学の授業が再開された。越村と小淵沢伸也は山小屋でのバイトが終わり下山するが、来年もまた来られるか判らない。此の夏はとうとう小淵沢伸也とは一緒に休暇が取れなかった。そこで北穂高岳小屋へ縦走して、矢張り呑むのなら此処のテラスだと。そこで生ビールで乾杯して別れることにした。早朝に山荘の主《あるじ》に挨拶して大キレットから北穂高岳へ向かった。毎度ながらこの大キレットには泣かされる。前回は女性の澤村さんをエスコートするつもりで挑んだ。今日は二十歳に成るか成らんかの二年目の登山者だが、難なくあの鎖場を通過していく。あれには感心させられた。

 十時には北穂高岳小屋に着いた。秋になるとまだ上高地は賑わっても、樹林帯を抜けてここまで登って来る登山客は急激に減る。荷物を降ろしてスッカリ登山客が減ったテラスを二人は見回して売店に行った。生ビールの売り場にはまだ彼が居た。此の山小屋は冬は閉鎖されて四月の連休前に開ける。彼も新雪が積もり出す十一月最初の日曜まで頑張るそうだ。

「あんたらで今年のビールは終わりだよ」

 都会はまだムンムンしているが、流石に九月に入ると需要どころか登山客そのものが減ってくる。

「もう空ですか」

「いや、店じまいしたあとの乾杯に残してある」

 下山するのに出来るだけ荷物を減らしたい。そう言って缶詰以外の保存の利かないつまみを大サービスしてくれた。

 二人は展望の利くデーブル席で呑みだした。小淵沢伸也は高校生の時に来て、此の景色に惚れ込んで今年も来た。それだけに女性に初心《うぶ》でも、そこそこの登山に関してはいい腕をしている。


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