武奈ヶ岳登頂1
山頂は瓦礫のような砂利の地面に、低い岩が多く露出している。それでも山頂の平らな地面のあちこちで登山者たちが休憩を兼ねて食事を摂っている。
さあ食べようと越村たちも、頂上付近から数メートル下の安定した場所に、小さいビニールを敷いて四人は囲むように座り込んだ。越村と澤村は何度が登頂して感激は少ないが石塚姉弟、特に弟は稀に見るズボラ体質の所為か感激もひとしおだ。これに一番感謝しているのは、今まで手に負えなかった姉の沙苗さんだ。子供の時からがなり立てても、体力が逆転した中学生の頃には、姉の言うことなど本人に非があろうと、子供じゃないと、親にも反抗して素直に受け容れなかった。石塚の性格では、適当に返事をはぐらかして、ほとぼりが冷めるまで時の流れに任せている男だった。
四人は等間隔に座り、今は登頂した充実感に包まれて、登山で使い果たしたエネルギーの補充に躍起になっていた。こう言う経験を多く積み重ねている越村と澤村はゆっくりと食べ出した。
姉弟がこうして外で食事をするのは、石塚に染みついたつまらぬ意地が邪魔して少なくとも今日までない。ここまでお膳立てをした越村に、姉弟は共通の恩義を感じてもおかしくない。
越村が石塚をここまでさせたのは、毎度聞かされ続けたお姉さんの存在だ。夏のバイトで知り合った澤村を、まだ見ぬ石塚に関心を寄せさせたのもその一環だ。
旅館に閉じ籠もった石塚のお陰で沙苗さんに出会って、彼の情報は想像と一致した。越村は猛烈と石塚を現世界への取り込みに澤村さんを紹介した。その成果が今眼前で遂げようとしている。
石塚の両親は長男に家を託して、次男の石塚祐司にもそこそこの期待を持たせようとしたが、強烈に世間を排除する自我に困り果てて自由にさせた。聞こえはいいがほったらかしだ。これに意を称えた姉は弟が手に負えなくなるまで干渉を続けた。が、ついに姉も我が家の方針に屈伏した。此の状態をここまで快復させた越村に、沙苗さんが自分の人生までも提供しょうと試みたのは肯けた。




