↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
148/165

武奈ヶ岳1

 土曜は昼からお互いに予定がある。殻に籠もった学生や先生方とは一線を画して二人は店を出た。澄んだ青空の彼方に鰯雲が風の波に乗って浮かんでいる。いい季節になったと空を見上げて出町柳駅に向かって歩き出した。

「これから大阪へ行くのか」

 京阪特急で淀屋橋で待ち合わせて、そこで越村提案の武奈ヶ岳登山を誘うと張り切っている。

「彼女、驚くぞ、誰の入れ知恵かと探る、が何も言わなくても察してくれる」

 恋は全てを明かすと面白くない。お互いの気持ちが通じ合う時は、腹の底を探り合って物事を進めるのが楽しい。相手の気持ちが解れば焦《じ》らせ焦らせ、その方が恋は深みを増すと言い聞かせて別れた。

 次の日曜日、石塚は意気揚々と京都駅で澤村響子さんを迎えた。焦らせと言ったにも関わらず、律義に予定時間前後の新快速を東海道線のホームで待っている。到着ホームに入った新快速の窓辺に彼女を見付けて、一目散に駈けてドアの前で待った。

「アラ、裏の八条口って言ったのに」

 ジーンズにティシャツの上からハイネックニットを身に付けていた。彼女は石塚の軽装に驚いた。

「姉貴と越村が来るから荷物は車に積んであるんだ」

 いいお姉さんねぇと二人は駐車場に向かった。

 同じ朝、越村は時計を見ると十分早かった。待つのが面倒で歩き出した。約束では今出川通から東大路通を下がる途中で、見付けてあげると言われて歩いた。東一条通の手前でクラクションを鳴らされて車が停まった。随分乱暴な待ち合わせと思ったが、慣れるとじっと待つのが億劫になる越村に合わせた。彼に言わすと沙苗さんが時間に追われない配慮だそうだ。どっちにしてもそれだけお互い心の余裕が出来ていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。