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石塚の改心4

 最初は階段を少しずつ登りながら呼吸を整えて再開する。特に気になるのは、此の勤行を石塚が自発的に申し出たとは思えずに今まで疑っていた。何を訊いても石塚は白状しないのに根気負けした。それから彼の意思表示を尊重して、極力、澤村さんの名前は出さなかった。これが功を奏して途中でへたることもなく、上がり下り一本を常に完走した。

 二週間前にはトレーニング中も、一回登りきった時と下りた時は十分ほど休憩を取っていた。最近は五回を目安に休憩なしでやった。短い休憩で話題にするのはお互いの彼女の事だ。此の辺りで越村の指摘に、石塚の自発的行動発言も時々怪しくなって来た。自発的なんて格好つけやがって本当は彼女にそそのかされたと思っていた。だが彼女からの忠告でなく、あくまでも自発的な申し出に拘ったのには、途中で挫折する恐怖を克服するための石塚の手段だと知って驚いた。

「石塚、お前、澤村さんと己の意志薄弱を相殺すのに、そこまで自分を追い詰めていたのか」

 と大笑いした。此の筋トレを始めて澤村さんとは、込み入ったバイトを挟んでも最低四五回は会ってる。その成果を期待する彼女を想って、粛々と耐える処に石塚の真剣な愛の重さを感じた。

 石塚がエレベーターを止《や》めて階段を使い出した。もっとも大学構内にそのような施設はない。それを知ったのは十月最終の土曜日だ。吉田山のトレーニングは大学の講義を終えて夕方の平日のみで、土日はお互いの恋事情で取りやめている。もっともこれ以外の別な事情など今の二人には挟む余地はない。土曜は休講になり大学に来たが時間が余った。

「オイ、如何《どう》する」

 こっちは休講でも、彼女の予定に変わりはない。久し振りにお前の愚痴でも聞いてやるか。いや逆に姉貴の心境は知りたくないのか。と双方が言い合って二人は直ぐ喫茶店へ直行した。学生と教授や講師が時間つぶしに利用する此の店に入ったのはひと月振りだ。流石にバイトの女の子は他校の学生だ。二人掛けの空いたテーブルに座った。注文したアップルパイに珈琲は合わないと紅茶にした。














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