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穂高連峰8

「だって会いたかったから、それに越村さんも一緒だから何とか大キレットを越えられた」

「まあ今日は同伴が居たからいいけど、一人じゃダメよ」

 同伴か、なんかバーかスナックを連想さす。他に言い方はないのか。サポート者とか支援者とか。

「とにかく越村さんは凄いのよ。去年はほとんど一人で縦走しても、どんなふうに登っているか知らなかった。でも今日初めて一緒に行ってみて、岩場を難なく越えてゆくのに感心した。だっていつも山荘では、ヘリが降ろした荷物の搬入では、一番に難儀していたもん」

 これは貶してはいないけれどひと言多い。

「あら、そうなの」

「奈弥ちゃんは意外と思うの?」

「だって一、二回ぐらいかしら? 越村さんが去年ここに寄ったのは」

「いや、単独縦走する時は此処には何回か寄ってますよ。此処からの景色は何度見えも飽きないからね」

 三千メートルの頂上に登りきって見る景色は、見晴らしは良いが、場所が狭くてあとから次々と人が登頂して来てのんびり出来ない。それに引き替えて此処は、珈琲を飲みながら此の風景を堪能できる。

「男の人はいいなあー。一人でも行かしてくれるから。女の子はそうは行かない。縦走計画を見て、山荘に居るベテランがガイド代わりに同行して貰わないと許可してくれないもん。それほど大キレットは難所なのよ。此処で音を上げればジャンダルムはもっと難易度があるわよ」

「そりゃあそうだ。女の子のバイトは少ないのに、滑落事故でも起こされたら益々来てもらえないでしょう」

 奈弥ちゃんの登山歴はほとんど知らない。去年の二ヶ月のバイトで顔だけは見知っただけだ。今回は間近に隣の席で初めて喋れた。


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