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穂高連峰7

 北穂高岳小屋は、北アルプスでは一番標高が高い場所にある。

 三千メートル級の頂上からの眺めは何処も良いが、椅子に座りテーブルに飲み物や本を置いて眺められるのは此処だけだ。澤村さんも、奈弥《なみ》ちゃんから今年もバイトに行くと聞かされていた。神奈川の茅ヶ崎市に居る奈弥ちゃんと関西に居る澤村さんとはメールで遣り取りしている。久し振りに会って語るには、北穂高岳小屋のテラスと決めていた。なんせ三千九十メートルのテラスで、しかも都会的なブレンド珈琲を飲みながらお喋りをするのを彼女たちは楽しみにしている。テラスのテーブル席は一間《いっけん》の長さの椅子とテーブルが四セット在る。更に凄いのが、絶壁の上に張り出したテラスをコの字型に囲む内側が、幅の狭いテーブルになって飲み物や本が置けた。更に長椅子が備えて在り、此処はグループでもゆっくり座れた。テーブル席はゆったりと六人が座り、詰めれば八人掛けでも大丈夫だ。矢張り景色を堪能しながら飲むのならテラスの外側に張り出したカウンターのような席だ。しかもカウンターの向こうは北アルプス、三人はそこに座った。顔を合わせて喋れないが、三千メートルの山々が眼下に近い視線で眺められる。まさに非日常的な世界と対面しながら久振りの近況を喋る。実に贅沢この上ない再会場所だ。

「あたしもそうだけど、響子ちゃんも小屋へは登山口からは樹林帯を抜けて沢筋から登って来たんしょう」

「そうだよ。小屋に来てから縦走するのは今日が初めて」

「響子ちゃんは本当にあの大キレットを登って来たの。もう滑落したらどうすんの」

 と呆れて北穂高小屋の奈弥ちゃんに言われてしまった。


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