画家のギャラリー10
酒どころで林立する酒蔵を見ると、暇乞いをするには、余りにも通でなくても呑みたくなる。
「どうですかお酒でも呑みながら掛川さんについてお話をしませんか」
陽の高いうちから、近本さんに記念館の一階奥の隅に、八畳を観葉植物で囲った利き酒のスペースに案内された。此処は当社のお酒の宣伝と展示品の余韻に浸りたい人に設けた。スナック風のカウンターで気軽にお酒が呑める。カップル用に二人掛けの丸テーブル席も四つ並べてある。
近本さんは二人に辛口の酒をコップに注いで二つカウンターに出した。普段は受付に居る女に子が此処で酒のオーダーをする。
今日はあの絵に関しては私が詳しいが、篠さんの紹介もあり、これからあの絵がどう飛躍するか。お姉さんと友人の越村さんを交えて石塚さんに付いて訊かれた。幾ら議論を重ねても石塚は、掴み所ない点では一致した。そこで話題を変えた。
「篠さんは此処でバイトをしていたんですか」
越村が訊ねた。
「そうですね、もう十年も前ですが、その頃に掛川さんの絵の才能に目を付けたようです」
最後に展示してある絵に、篠さんは賭けたようだ。あの絵が二科展に入賞した祝いを限られた少ない人で此処で催した。目立つように三階の展示室は、茅葺きの絵を入り口に飾り、最後にあるのが入賞作品だ。
「どうですか。入り口の作品がいかに過去から脱皮しているか、一目で気付かれたでしょう」
あの絵の発想の根元が謎で、篠さんから一報を受けて、近本はじっとして居られなかった。
篠さんの愛をもってしても、入賞作品から代わり映えしない画風を、あの絵は一気に変えた。芸術にとって愛は不可欠な想いなのは今も変わらないが、筆先に伝わる感覚は別もんだとあの作品を見てつくづく思い知った。




