画家のギャラリー5
「石塚の為にお父さんに僕を会わすんですか」
なんちゃったけど、父は弟に似たあなたに興味がある。まだ会ったことないのに沙苗さんもお母さんも、いったいどんなことを吹聴したか気になる。
「いったい、何を、どんな風にお父さんに云ったのですか?」
ウフフとあなたは弟の分身なのよと意味ありげに笑った。冗談じゃない。御室八十八カ所で足腰を労なきゃならない、あんな鈍くさい男と一緒にされてたまるか。
「似てるどころか、ぜんぜん正反対ですよッ」
荒らげるつもりがないが、かなり自重して云っても彼女は平然として聞き捨てられた。まったくもってあの厄介な男と比べられるほど、心身ともに老け込んではいない。講義室ではいつも仙人のようで、掴み所のない奴だが、澤村さんを紹介すると急にあっちこっち動き出した。
「大学で一緒になっただけのあなたより、あたしは祐司を子供の頃から知ってるのよ」
そうは云っても男同士の付き合いは別もんだ。なんせ彼奴は冬眠中の熊のように手の届く範囲の物しか引き寄せない。大学でその手の届く範囲に居た越村と喋り出しただけだが、これが大きな進歩に繋がったのは確かだ。まあ、お陰で学友からは同じ変な奴の部類に入れられてしまった。石塚はそんなことは一向に気にしていない。そこが仙人と影で比喩された所以だが。森のゴリラが奥深い自然の摂理を知ってるように、石塚も見過ごされ易い世間の摂理に抵触しない術を身に付けている。
近鉄と連絡している丹波橋を過ぎると直ぐに中書島に着いた。駅から酒蔵が林立する疎水縁を歩くと三階建ての近本記念会館が見えた。受付で篠さんの紹介を告げると直ぐに古希を過ぎたが、しっかりした足どりでスーツ姿の男性が受け付け奥の事務所から出て来た。
「篠さんから経緯は伺ってます」




