画家のギャラリー1
訪ねた北村画材店は間口はそう広くなく、奥行のあるウナギの寝床で、ギャラリーは更に一番奥で木屋町通に面している。そうとは知らずに画材店に入ると五十絡みの物腰の穏やかな店主とおぼしき男が現れた。男に掛川さんの絵を見せて欲しい頼んだ。矢張り余り売れない画家の所為か此処を知った経緯を訊かれ、かやぶきの里を告げた。男は此処の店主と名乗り娘の篠を呼んだ。お父さんなーにと面倒くさそうな声が奥から響いた。
「あっら〜、越村さん、ウッ、そちらの方は」
「石塚沙苗さん」
沙苗さんが自己紹介すると石塚祐司さんのお姉さん? と聞かれて頷いた。
「お前、こちらの方は掛川さんの絵を見に来られたのだよ」
あらー、そうなのと篠さんは二人を奥の画廊に案内した。
「直接ギャラリーにいらっしゃる時は、表の河原町でなく裏の木屋町から来ればよかったのに」
そうは云われても、まさか画廊が木屋町側に独立してるとは、表を見る限り誰も思わない。
「あれから掛川さんの絵は売れてますか」
見ての通り沢山さん飾ってあるわよ。と他人事みたいに云う篠さんの心境は掴みにくく、将来の不安はないのだろうか。もっとも彼を婿養子に取って、この店を継ぐのなら売れなくても問題はないのかも知れない。ただプライドは大きく傷付く、そこを篠さんも掛川もどこまで堪えられるか。
「お姉さんって、想っていたよりしっかりした方なのね」
「弟がそんな風に言ってたんですかッ」
沙苗はムッとした。
「そうは言ってませんけど、石塚さんを観てそう思っただけです」
細い通りの先にあるドアの向こう側に、ひと坪ほどの小部屋に流し台が有り、そこを通り抜ければ二十畳以上の画廊に出られた。隅っこに三点の応接セットがあった。壁側以外にも中央を仕切るパティーションにも絵が掛けてある。沙苗さんはじっくりと観察しはじめた。




