石塚の思い2
「それで今度は、東寺の縁日に行く話で盛り上がったんだ」
「今月の縁日は平日だ。講義はさぼるのか、秋から大学に行ってないお前は、単位大丈夫か」
二三回抜けただけでたいしたことないが、澤村さんが原因での留年だけは避けるように言った。それはお前の知ったこっちゃないと言われた。
「箕面なんて彼女は本当は行くきなかったんやろう」
「俺は箕面を知らないからお前がいつも言っていた標高の高さが気になって低い方に決めたが行ってみて、まんまと彼女にしてやられた。とにかくあの御室八十八カ所には手を焼いた。彼女に言わすとこの近くの小学校の遠足にも組み込まれていると聞けば、小学生が登れるのに拒めばガキ以下に見られては俺の立つ瀬がないと一つ返事で決めた」
それと澤村さんと一緒に槍ヶ岳から北穂高に縦走した話を聞かされた。
あの縦走は百メートルの急斜面の上がり下がりが続く大変な難所だ、それを箕面と御室の高低差にそのまま当てはめる、石塚の滑稽な処だ。平地と三千メートルでは同じ百メートルの急斜面でも月とスッポンの違いに、彼奴は気付けない。エスカレーターしか移動手段を持たない男の悲劇だ。いや、喜劇だろう。
「俺が穂高について講釈しても、お前は上の空どころか、聞く耳持たないとあざ笑っていたのがここに来て後悔しただろう」
「そんな話より、彼女は俺の事をいろいろ聞いて、ここぞとばかりに俺はPRしても彼女は良く聞いてくれたぞぉ」
「澤村さんは自分の話は余りしなかったのか、聞けなかったのか、どっちなんだ。要はお前が出しゃばり過ぎたのか」
自業自得だと越村は笑って更に追求した。
「聞き上手が話し上手なんだ。石塚、お前の場合は一方的に言いたいことを言えば、相手は萎縮するか切り上げる。それでも澤村さんは根気よく付き合ってくれていい感触が得られたのか ?」
上機嫌でなければ、次の東寺の縁日の約束は取り付けられないとまで彼は言い切った。




