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穂高連峰5

「澤村さんがそこまで槍ヶ岳や穂高に愛着心があるとは思わなかった」

「だってあたしは三回目よ、でも女の子ではあたし一人、もう一人の美佳《みか》ちゃんは二回目だけど、去年は休みが合ったのは二回しかなかった。それも無理して合わしてもらった」

 スタッフは十五人もいるが、街のホテルと違って一人で何役も熟《こな》さないと経営が維持できない。なんぼ山好きでも学生は二ヶ月も働くとなると、みんな尻込みする。冬場もやってる山荘は夏はバイトでも、冬は何処もバイトでなく社員みたいに通年居る人でやってる。

「あの穂槍山荘《ほやりさんそう》も、あたし達はみんな帰ってしまって、冬場は数人でやってるのよ」 

「忙しいのは夏だけか」

「だって麓《ふもと》の上高地だって、冬はほとんど来ないわよ」

 それだけに夏の短期バイトには、休みを使って近辺を縦走できるメリットがある。それを目当てに応募する人が多い。裏を返せばメリットの連休がなければ中々人が集まらない。しかもほとんどが暇になる週明けに交代で休ませる。

「それで美佳ちゃんと一緒に縦走できたのは二回くらい。男の人はほとんど単独で縦走する。でもその方が気楽で良いみたい」

 せっかくの休みを使って好きな山へ行くが、男たちは登る山がバラバラで好みが合わないようだ。

「これから行く北穂高岳小屋はバイトの人は奈弥《なみ》ちゃんだけで、他は知らないって聞いてる」

「そうか通年居る年配の人を除けばバイトは新人ばかりか」

「そうでもないわよ。越村さんみたいに山好きな学生は多いから、結構知ってる人がまた来てるかもね」


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