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西明寺3

 インドで発生した仏教は、ヒマラヤからチベットを越えて唐から日本に伝わった。エベレストを目指す澤村さんは原点を逆に辿っている。

「ウッ? それでお父さんのシステムキッチンとチベット仏教がどう繋がるのかしら?」

 これは面白い、彼女の大学はキリストを教義とする教えを受けている。湖東三山は紅葉の季節だけ、知る人ぞ知るスポットなだけに、普段は訪れる人は相当な凝った人だ。

「此処はお父さんが見付けた寺ですか」

「そう、でも、もう忘れているんじゃないかしら。何しろあたしが子供の頃に聞かされただけで、それ以後はまったく話題にもしなかったのを、あなたと出会ってあたしが想い出しただけ」

 弟は山岳修験者なんて大袈裟に言うから、いささか調子外れしたようだ。

「今どきそんな人が居るわけないでしょう」

 弟の話を鵜呑みする彼女じゃない。頭ごなしに否定しても関心を持ってくれた。なんせ弟は稀に見る変わりもんで、大学で付き合いのあるのは越村だけだ。一度切っ掛けがあれば会ってみたいと思っていた。その手始めが、父が事業を興《おこ》した切っ掛けの湖東三山巡りだった。

「どう、ここまで見てきて」

「それぞれ個性的ですね」

「で、しょう」

 観光化されなくて、訪れる人ものんびりして、散策もゆったりと回れて、寺社仏閣が自然に溶け込むように林立するさまがじっくりと味わえる。この余裕が新たな日々にまい進する原動力になり得た。恋も然り。


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