金剛輪寺3
「沙苗さんはミッション系の大学なんでしょう。それが何でいきなりこんな山麓のお寺に来るんです。弟と張り合うだけなの?」
「そんなバカな真似はしません。第一うちのお墓は、浄土真宗のお寺にありますッ」
「じゃあ何で」
「校内に蔦の絡まるチャペルがあるなんて素敵で、毎週末にお祈りすれば、翌週からまた新たな日々が楽しみになるでしょう」
仏教では来世よりも過去の因縁に囚われ過ぎだ。そこへいくとキリスト教は前向きでポジティブらしい。
「それって、宗教観でなく、気の持ちようじゃあないですか」
「まあね、あっ、本堂が見えて来た」
沙苗さんは反論する余地がない場合は急に矛先を変える。
檜皮葺きで入母屋造りの本堂は、鎌倉時代の創建で秘仏の聖観音像と十体近くの仏像が安置されてる。なるほど堂々とした建物だ。此処も比叡山の焼き討ちの巻き添えを喰らったが下のお堂から離れていて、信長軍はここには気付かずに、この本堂だけは焼き討ちに合わなかった。
「それだけあの長い傾斜参道が幸いしたのよ」
「へ〜え、結構慌てていたんだ」
「まあ、そう言う解釈もあるけどね」
職務に忠実でなく怠慢だと言っている。消失を逃れられたのはそれだけあの長い傾斜参道のお陰で救われて、感謝して登れば心に乱れもなく、颯爽として登れるとかなり根性精神を叩き込まれた。それは石塚に言って欲しいが、受け容れる素地がなければ無意味だ。それでも見開かせた越村に、沙苗さんはいたく感謝しているが、言い方が回りくどくて素直さに欠ける。恋はどうだろ。お寺巡りで攻略の展望が掴めるか些か不安でもある。
「その〜、何ですが、沙苗さんは前向きな姿勢を求めてミッション系の大学を選んだそうですが、寺院に詳しいのがどうも腑に落ちないんですが……」
「別に、それ一辺倒で偏ったものの考え方はよくないわよ」
もっと柔軟に世の中を見た方が世間に対する考え方に幅が出来る。それを彼女が求めているとなれば、俄然と意識改革にも前のめりになれる。




