湖東三山2
湖東三山の中の百済寺に向かっている。石塚の御室八十八カ所よりも霊験あらたかで由緒あると言われても、なんで最初のデートスポットがお寺で、こんな所まで来るのか。
「石塚が行ったのが御室八十八カ所のお遍路と聞いて、急に思い立ってお寺に車を走らせてるんじゃないでしょうね」
「姉弟で張り合ってどうするの?」
彼女の様子を窺っても車の運転に夢中で、変なことは聞けそうもない。前回みたいに左右に揺さぶられればたまらない。
「行ったことはあるの?」
「う〜ん」
とひと捻りした。
「女友達と行ったけど、矢張りアベックで行きたくて、あなたの誘いを受けた時にもう決めたの。回遊式の庭園で紅葉の季節には絶景よ、南禅寺や詩仙堂なんて目じゃないわよ」
前回行って気に入って温めていた場所なんだ。それを越村との最初のデートスポットにした。その思い込みに、沸き立つ気持ちを抑えるのに苦労したのも、見透かされてあとで振り回されるのが堪えられないのだ。
此の辺りまで来ると田園地帯の中に陸の孤島のようにあちこちに住宅が密集している。やがて田畑も住宅も絶えて、山林が目立ち始めると開けた場所に出た。その先に在る土産物屋の向こうに駐車スペースが見えた。そこが百済寺だ。
見たところひっそりとして、周囲には何もない山あいの寺だ。御室より見応えがあると云われても、何でこんな所まで来るのか、此処は侘び寂びの境地だ。とは言っても彼女と二人きりなら悠然と構えられる。
流石にこの時期は穴場と見えて訪れる人は疎らだ。これからお互いの気持ちを探り合うには丁度良い環境にも見える。これが紅葉シーズン真っ只中なら人混みに押されてそれどころではないだろう。
車から降りて歩くと直ぐに竹垣の切れ目の向こうに拝観受付があった。車ではここまで来るが、山門はもう少し下にあり、そこをくぐり抜け石段を登り切るとこの受付場所になる。




