湖東三山1
沙苗さんは一向に気にしないまま湖岸沿いに車を走らせる。琵琶湖大橋を過ぎた辺りから湖岸には入り江が続き、三つ目には今までより大きい入り江が見えた。ここまでは右手は田んぼで左は湖だ。ふたつの入り江と三つ目の半円を描いた半島はいずれも右手が田圃で左が湖だ。三つ目の入り江を過ぎる辺りから、田圃でなく小高い山が正面に見えた。湖岸道路はそこから狭い脇道になっている。沙苗さんは湖岸の脇道に入らず、そのまま山手に続く広い道に入った。湖岸を離れて一体どこに向かっているのかと思うまもなく近江八幡市を抜けるとまた田園風景が広がった。右手は広々とした田園で左はこざっぱりした町並みの中を走っていた。やがて左に小高い山が連なり、そのひとつの山頂を示して安土城だと言った。JRの線路を抜けて新幹線の高架を過ぎ、疎らな町並みを過ぎると田圃と住宅が渾然とする道を走った。やがて一般道の狭い道を幾つも曲がりながら山に近付くも、相変わらず車の行く手は鈴鹿山系の山々が屏風のように連なっている。
「ひょっとしてあの山の向こうは三重県?」
「ひょっとしなくてもそうよ」
「まさか、あの山越えるの?」
「あの麓に紅葉で有名な湖東三山があるのよ」
「湖東三山?」
「ウッ、知らないの。湖東三山。若狭の人じゃあ無理もないか。でも山じゃないわよ」
「山じゃない、なら、何なの?」
「お寺、湖東三山として紅葉が有名なお寺で百済寺、金剛輪寺、西明寺でもちょっとまだ早いのよね」
「ちょっと処か、まだ相当早過ぎる」
「でもお庭も凄いわよ。池の配置が素敵なの」
「池の配置?」
「そう、その池が絶妙にお庭とお堂の中に組み合わせてあるの。それが天竜寺や竜安寺、金閣寺のようにただ広いだけの池がポツンとあるのでなく、青蓮院や蓮華寺のような小さな池が上手く組み合わさって配置されているの」
「へ〜え、京都以外にそんなお寺があるの?」
「そう、でも交通の便が悪くて車が一番便利だから車で来たの」
沙苗さんに言わすと穴場らしい。




