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姉に無職だと思われているAランク探索者の俺、企業VTuberの初ダンジョン配信を“ヒーロー見参”で救ったら謎ヒーローとしてバズった  作者: 黒瀬りつ


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第14話:【安全第一物理】見参未遂ニキ、ゴーレムを破片ゼロで完全解体する

 ズンッ!!


 ダンジョン全体が震えた。


 俺の両腕と、ダイヤモンド・ゴーレムの拳が真正面からぶつかり合う。


 耳の奥まで響く重低音。


 足元の結晶床が、悲鳴を上げるようにひび割れていく。


 普通の探索者なら。


 腕ごと粉砕され、そのまま壁の染みになっていただろう。


 だが。


 今の俺は『ヒーロー見参』発動中。


 身体能力強化。


 筋力強化。


 防御力強化。


 反射神経強化。


 そして。


 羞恥心だけ据え置き。


 最悪のステータス配分だった。


 肉体は強い。


 非常に強い。


 精神だけが一般人である。


 コメント欄は、もう完全に祭りだった。


:受け止めたああああ!!


:ゴーレム止まった!?


:素手!? 素手なの!?


:見参未遂なのに強すぎるwww


:名乗りだけ未遂で性能そのままなの草


:結晶板も蹴り飛ばしてなかった?


:スタッフ全員助かった!!


 そこだ。


 そこを見ろ。


 助かった。


 それでいい。


 見参が未遂かどうかはどうでもいい。


 いや。


 俺にとっては非常に重要だが。


 今だけは後回しだ。


 俺はゴーレムの拳を押し返しながら、周囲を確認する。


 姉貴。


 無事。


 スタッフ。


 全員、結晶板の落下地点から退避済み。


 探索者協会の立会人も生存。


 チーフマネージャーは、岩陰にしゃがみ込んでいる。


 その腕の中には。


 配信ドローン二号。


 ……いや。


 なぜ機材を庇っている。


 まず自分を守れ。


 だが。


 あの人ならやる。


 配信責任者だからだ。


「チーフ! ドローンを捨てて下がってください!」


「会社の機材です!」


「命より高くない!」


「修理費も高いんです!」


「今する話じゃない!」


 社会人は強かった。


 別の意味で。


 ゴーレムが低い唸り声を上げる。


「ギギギギギギ……!」


 結晶の拳へ、さらに力が加わった。


 俺の足元が沈む。


 床へ亀裂が広がる。


 このまま真正面から力比べを続ければ、退避ルートそのものが壊れる。


 それでは意味がない。


「下がれ!」


 俺はゴーレムの拳を斜めへ受け流した。


 巨体の力が横へ逃げる。


 結晶の拳が壁面へ突き刺さった。


 轟音。


 壁が揺れる。


 だが、破片は人のいない方向へ飛んだ。


 よし。


 俺はそのままゴーレムの懐へ潜り込む。


 派手に殴れば終わる。


 たぶん、一撃で砕ける。


 だが。


 こいつは全身が高硬度の結晶でできている。


 雑に粉砕すれば。


 鋭利な破片が散弾のように飛ぶ。


 避難したスタッフ。


 姉貴。


 立会人。


 誰かに当たる。


 論外だ。


 俺が今やるべきことは。


 配信映えする必殺技ではない。


 安全第一の解体作業だった。


「安全第一……」


 俺は自分へ言い聞かせる。


 すると。


 聞きたくない電子音が鳴った。


【決め台詞候補を生成します】


 するな。


【安全第一、それが我が正義――】


「黙れ」


【安全を守る者こそ、真の英雄――】


「最後まで言うな!」


【候補を再生成します】


「諦めろ!」


 こいつは敵より諦めが悪い。


 能力は俺の話を聞かない。


 今日も通常運転だった。


 ダイヤモンド・ゴーレムが壁から拳を引き抜く。


 振り返る。


 俺へ向かってくる。


 今度こそ、正面から俺を狙う。


「そうだ」


 こっちを見ろ。


 姉貴たちを見るな。


 俺だけを狙え。


 ゴーレムが右腕を横薙ぎに振るう。


 俺は低く沈み込んだ。


 巨大な拳が頭上を通過する。


 風圧だけでバイザーが震えた。


 そのまま右膝へ潜り込む。


「ふっ!」


 拳ではない。


 掌底。


 結晶の表面を砕かず。


 衝撃だけを内側へ流す。


 バキィッ!!


 ゴーレムの右膝関節に、大きな亀裂が走った。


 巨体が傾く。


 破片は飛ばない。


 続けて左足首。


 ガキンッ!


 右肘。


 バキィッ!


 左肩。


 ドンッ!


 急所は狙わない。


 核も狙わない。


 まず、動きを止める。


 誰も怪我をしないように。


 巨大な危険物を、順番に分解する。


 戦闘というより。


 命懸けの解体工事だった。


 俺はゴーレムの周囲を走る。


 黒銀の身体が、結晶床の上を滑るように加速する。


 配信ドローン三台が追ってきた。


 やめろ。


 撮るな。


 来るな。


 俺が右へ跳ぶ。


 ドローンも右。


 左へ回る。


 ドローンも左。


 背後へ抜ける。


 三号機が先回りしている。


 完璧な連携。


 ステラライブの技術力が憎い。


「撮るな!」


 思わず叫ぶ。


:本人また言ったwww


:撮るな頂きました


:黒銀ヒーロー、撮影拒否


:でも動きが映えすぎる


:カメラから逃げながらゴーレム解体してるw


:仕事熱心なドローンVS映りたくないヒーロー


:この戦い毎回やってほしい


 シリーズ化するな。


 定番化するな。


 俺の精神を長期コンテンツにするな。


 ゴーレムの左腕が振り下ろされる。


 俺は横へ跳ぶ。


 拳が床を砕く。


 破片が姉貴たちの方向へ飛びかけた。


「させるか!」


 俺は空中で身体を捻り、破片をまとめて蹴り返す。


 結晶片はゴーレムの胴体へ突き刺さった。


 自分で出した破片は、自分で受け取れ。


 危機管理だ。


 一般論です。


:今、破片全部蹴り返した!?


:精度どうなってるんだよ


:スタッフ側に一個も飛んでない


:待って


:これ、最初から破片が飛ばない場所だけ壊してない?


:安全第一ってそういう意味か


:ただ強いんじゃなくて周囲見てる


:救助専門ヒーローじゃん


 そのコメントを見て。


 ほんの少しだけ。


 胸の奥が軽くなった。


 分かってくれた。


 見せたいのは派手さではない。


 俺が強いかどうかでもない。


 誰も怪我をしないこと。


 それだけだ。


 ――次のコメントを見るまでは。


:でも今日も身体のライン仕上がってる


 帰れ。


:この前より胸板厚くない?


 比較するな。


:背筋すご


 分析するな。


:前回映像と並べて検証中


 並べるな。


:スクショ成功


 消せ。


 俺の精神ゲージだけが、戦闘と無関係に削られていく。


 ゴーレムよりコメント欄の方が、確実に俺へダメージを与えていた。


 社会は怖い。


「ギギギギギギギィィィッ!!」


 ダイヤモンド・ゴーレムが怒りの咆哮を上げた。


 砕かれた右膝を引きずりながら、無理やり身体を起こす。


 胸部の巨大結晶が。


 不気味な赤色へ染まった。


 俺は目を細めた。


 ……まただ。


 壁を破って出てきた時から気になっていた。


 あの赤黒い光。


 自然発生した魔獣の魔力循環ではない。


 流れが歪んでいる。


 外から無理やり。


 何かを命令されているような魔力の動きだ。


 ゴーレムが、ゆっくりと頭部を動かす。


 俺を見る。


 ――いや。


 違う。


 視線は、俺を通り越していた。


 その先。


 避難したスタッフたち。


 姉貴。


 ゴーレムは。


 目の前で関節を砕いている俺ではなく。


 再び、救助対象へ向かおうとしていた。


「……そういうことか」


 普通の魔獣なら。


 今、一番の脅威は俺だ。


 真っ先に俺を排除しようとする。


 だが。


 こいつは違う。


 俺を無視してでも。


 姉貴たちを狙う。


 まるで。


 最初から、それだけを命令されているかのように。


 胸の奥。


 赤く光る巨大結晶。


 あの中に。


 何かある。


 俺の勘が。


 静かに確信へ変わった。


 ダイヤモンド・ゴーレムは、俺を見ない。


 目の前で関節を砕かれ。


 体勢を崩され。


 片膝まで潰されてもなお、その視線だけは避難したスタッフたちを追っている。


 不自然だ。


 魔獣として、不自然すぎる。


「……胸糞悪いな」


 誰かが。


 こいつを操っている。


 誰かを殺すためだけに。


 俺は床を蹴った。


 黒銀の身体が一直線に駆ける。


 ゴーレムも迎え撃つように腕を振り下ろした。


 轟ッ!!


 巨大な拳が床を砕く。


 俺は紙一重で踏み込み、その懐へ潜り込む。


 狙うのは胸部結晶。


 だが。


 全力で殴れば終わり――ではない。


 証拠が欲しい。


 もし本当に外部から細工されているなら。


 核ごと粉砕した瞬間に、真相まで消えてしまう。


 だから壊さない。


 取り出す。


 それだけを狙う。


【技名候補を生成します】


 来た。


「やめろ」


【邪悪なる核を貫く――】


「黙れ」


【漆黒救世――】


「センスが終わってる!」


【ヒーロー・】


「続けるな!」


 能力が喉を開こうとする。


 俺は奥歯を噛み締めた。


 戦闘中でも空気を読まない。


 やはり敵より厄介だった。


 俺は左足を踏み込む。


 拳を振りかぶる。


 ――いや。


 違う。


 拳じゃない。


「……ここだ」


 人差し指と中指。


 二本だけを揃える。


 狙うのは結晶の継ぎ目。


 魔力が集中している一点。


 そこへ。


 ガギィィンッ!!


 指先が結晶へ食い込んだ。


 硬い。


 だが。


 砕けない硬さじゃない。


 ゴーレムが苦しげに身をよじる。


 右腕が迫る。


 左脚が振り上がる。


 全部無視だ。


 今、手を離したら終わる。


 俺は右足を床へ突き刺した。


 ヒビが放射状に広がる。


 身体を固定。


 左手をさらに奥へ押し込む。


 何かが指先へ触れた。


 冷たい。


 結晶じゃない。


 人工物だ。


「……見つけた」


 指先でつまむ。


 小さな赤黒い結晶片。


 いや。


 結晶じゃない。


 魔力回路が刻まれた、小型チップ。


 その瞬間だった。


 ゴーレムの全身から力が抜ける。


 赤く染まっていた胸部結晶が、一瞬だけ激しく明滅した。


「やっぱりな」


 自然発生の魔獣じゃない。


 誰かが。


 誰かがこれを埋め込んだ。


 コメント欄は、その瞬間を見ても何が起きたのか理解できていなかった。


:今何した?


:え?


:胸触った?


:なんか抜いた?


:見えねぇ!


:カメラもっと寄れ!


 寄るな。


 証拠品だ。


 映すわけにはいかない。


 俺はチップを手のひらへ隠す。


 そのままスーツ内側の収納スリットへ滑り込ませた。


 カチッ。


 固定完了。


 ……このスーツ。


 密着型で羞恥心を殺しに来るくせに。


 収納だけは妙に優秀なんだよな。


 もっと他へ性能を回せ。


 例えば布面積とか。


 例えば布面積とか。


 大事なので二回思った。


「ギギギギギギィィィッ!!」


 ゴーレムが絶叫する。


 誘導核を失ったことで、魔力制御が完全に乱れたらしい。


 全身へ亀裂が走る。


 内部から赤い光が漏れ始めた。


「まずい」


 暴走する。


 このまま内部圧力が限界を超えれば。


 巨体そのものが爆散する。


 結晶片が弾丸のように飛ぶ。


 避難したスタッフ。


 姉貴。


 探索者協会の立会人。


 全員が危ない。


 俺は一歩踏み出した。


 派手な技はいらない。


 吹き飛ばす必要もない。


 必要なのは。


 破片を飛ばさず。


 静かに崩すこと。


 ただ、それだけだ。


 深く腰を落とす。


 右拳を胸部結晶へ添える。


 能力が、最後の悪あがきを始めた。


【決め台詞候補を生成します】


「いらん」


【悪を砕く正義の――】


「いらん!」


【未来へ繋ぐ希望の――】


「全部いらん!」


 俺は左手で自分の喉を押さえた。


 もう騙されない。


 どうせ最後に変なことを言わせる気だろ。


 今回は封じる。


 絶対に封じる。


 拳へ魔力を集中する。


 衝撃は外へ逃がさない。


 全部。


 内側だけへ流し込む。


 ゴーレムの内部構造が、頭の中へ浮かぶ。


 ここなら。


 崩せる。


 安全に。


 誰も傷つけず。


 その一撃だけで。


 俺は静かに息を吸った。


 右拳を胸部結晶へ添える。


 暴走した魔力の流れを感じる。


 誘導核を失ったせいで、制御を失った魔力が今にも外側へ弾けようとしていた。


 外へ逃がせば。


 結晶片が弾丸になる。


 避難したスタッフ。


 姉貴。


 探索者協会の立会人。


 誰かが怪我をする。


 だから。


 全部。


 内側へ返す。


【決め台詞候補を生成します】


「いらん」


【悪を砕く正義の――】


「いらん!」


【未来へ繋ぐ希望の――】


「全部いらん!」


 俺は左手で自分の喉を押さえた。


 もう騙されない。


 どうせ最後に変なことを言わせる気だろ。


 今回は封じる。


 絶対に封じる。


 拳へ魔力を集中する。


 衝撃は一点。


 外へは一切逃がさない。


 全部。


 ゴーレムの内部だけへ叩き込む。


「――安全第一」


 しまった。


 少し声が漏れた。


 能力が、ここぞとばかりに乗ってくる。


【フレーズを補完します】


「するな!」


 喉を押さえても止まらない。


 口が勝手に動く。


「――物理だァァァッ!!」


 ドォォォォンッ!!


 轟音がダンジョンを揺らした。


 だが。


 爆風はない。


 破片も飛ばない。


 衝撃はすべて、巨体の内側だけを駆け抜けた。


 胸部から頭部へ。


 頭部から両腕へ。


 両腕から脚部へ。


 暴走していた魔力回路が、一斉に沈黙する。


 次の瞬間。


 ダイヤモンド・ゴーレムの巨体は、音もなく崩れ始めた。


 頭部。


 肩。


 腕。


 胸。


 脚。


 すべてが細かな結晶粒となり、きらきらと光を反射しながら静かに舞っていく。


 まるで雪だった。


 危険な破片は、一つも飛ばない。


 結晶の粉だけが、ゆっくりと床へ降り積もる。


 成功。


 安全第一。


 物理で。


 ダンジョンに静寂が戻った。


 誰も怪我をしていない。


 それだけ確認して、俺は小さく息を吐く。


 コメント欄が、一拍遅れて爆発した。


:安全第一(物理)wwwww


:物理で全部解決した!!


:破片飛んでない!!


:ゴーレム消えた!?


:内部崩壊させたのか!


:昨日はワンパン、今日は安全解体


:この人、本当に救助専門なんだ……


:強いじゃなくて頼もしい


:安全第一物理、今年の流行語だろ


:身体のラインも安全第一


 帰れ。


 最後だけ余計だ。


 姉貴が、ゆっくりとこちらへ歩き始める。


 スタッフたちも安堵の表情を浮かべながら立ち上がる。


 チーフマネージャーは、配信ドローンへ何か指示を飛ばしながら、それでも俺の方へ駆け寄ってきていた。


 全員。


 無事。


 それだけで十分だった。


 その瞬間だった。


【救助対象の安全を確認】


 嫌な予感がした。


【任務完了】


「待て」


【変身解除シークエンスへ移行します】


「待て待て待て」


 まだ駄目だ。


 近い。


 姉貴が近すぎる。


 ここで解除されたら終わる。


 俺は一歩後ろへ下がる。


 姉貴は一歩近づく。


 距離が縮まる。


 配信ドローン三号が、まるで獲物を逃がすまいとするようにゆっくり旋回した。


 やめろ。


 今日は本当に仕事熱心だな。


 休め。


 有給を使え。


【変身解除まで十秒】


 来た。


 無慈悲な宣告だった。


【九】


 姉貴が立ち止まる。


 黒銀のバイザー越しに、まっすぐ俺を見つめている。


「あなた……」


【八】


 俺はゆっくり後ろへ下がる。


 逃げ道を探す。


 右。


 ドローン。


 左。


 スタッフ。


 後ろ。


 壁。


 前。


 姉貴。


 ない。


 どこにもない。


 逃げ場が。


【七】


 姉貴が、ほんの少しだけ目を細めた。


 その表情は、助けてもらった人へ向ける感謝の視線じゃない。


 もっと近しい。


 もっと見慣れた誰かを思い出そうとしている目だった。


 嫌な汗が背中を伝う。


 やめろ。


 その顔をするな。


 俺は黒銀ヒーローであって、黒瀬玲司ではない。


 少なくとも、今だけは。


 俺はさらに半歩後ろへ下がる。


 すると姉貴も、半歩前へ出た。


 縮まる距離。


 縮まらなくていい。


 今だけはソーシャルディスタンスを守れ。


【六】


 能力のカウントだけが、無情に進む。


 残り六秒。


 俺の頭の中では、警報が鳴りっぱなしだった。


 解除されたら終わる。


 バイザーが消える。


 スーツが消える。


 スタッフジャンパー姿の俺が現れる。


 その瞬間。


 七年間守り続けた秘密が、配信同接十万人超えの前で蒸発する。


 いや。


 蒸発で済めばまだいい。


 切り抜かれる。


 まとめられる。


 永久保存される。


 未来永劫、「ヒーロー見参ニキ=無職仮」がネットに刻まれる。


 そんな人生は嫌だ。


 絶対に嫌だ。


 姉貴が、小さく息を吸った。


 その瞳は黒銀のバイザー越しに、まっすぐ俺だけを見ている。


「……あなた」


 まずい。


 何かに気付いている。


 俺は本能的に一歩後ろへ下がる。


 逃げたい。


 だが後ろは壁。


 右にはドローン。


 左にはスタッフ。


 完全に包囲されていた。


 コメント欄も異変を察し始める。


:ハルカちゃん?


:どうした?


:なんか見つめてる


:知り合い?


:まさか正体バレ?


:え、弟説ある?


:いやいやいや


:でも空気がおかしい……


 やめろ。


 勘のいい視聴者は嫌いだ。


 俺は思わず喉を押さえた。


 そこへ追い打ちをかけるように、能力が淡々と告げる。


【変身解除まで六秒】


 知ってる。


 だから焦ってるんだ。


 頼む。


 あと少しだけ待ってくれ。


 俺は心の中で能力へ土下座した。


 もちろん、聞いてくれる相手ではなかった。


 姉貴の唇が、ゆっくりと開く。


「……玲司?」


 心臓が止まりかけた。 

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

一章終了まで毎日投稿します。

続きも楽しんでいただけましたら、フォロー・応援・感想をいただけると励みになります。

次回もよろしくお願いします。

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