第23話 第二拠点 2
画面に第二拠点の組織図が出る。
拠点長をトップに影1から影9まである。影1だけ拠点長の副官の位置にあって、他は下に並んでいる。
拠点長は親爺様だ。
「先に話しておくけど、親爺さんは終戦まで統領やったんや。
戦争で片足を失って、他にもいろいろ後遺症があることで、本人の強い希望で今の統領と交代した。」
「そうだったのですか。」
確かにスケールの大きな人だった。最初に雪野を見た時の圧も凄かった。
「今の統領は実務派で、親爺さんが統領の時は参謀兼副官やった。
2人はアカデミーの同期で、若い頃、中の国の国境駐留軍に一緒に加わったことや、北の国に陰忍として共に任務に入ったこともある。
お互いに言葉がなくても相手の考えてることや、どう動くつもりか分かり合える仲や。」
「そうなのですね。」
「組織図では見えんこともある。
普段そんなことは気にせんでええけど、一応覚えておき。」
「はい。」
「第二拠点の組織は中央棟に比べて軍事拠点に特化した組織や。
中央棟も第二拠点も軍と区別してるから警備室、警備員という呼び方をしてるけど全員が伊賀トップクラスの忍びや。」
「軍はまた別にあるのですね。」
「国民は全員20歳になったら一旦軍に入る。
3ヶ月の合宿訓練を受けて、そのあと3ヶ月は昼間は自分の仕事や勉強をしながら夕方から夜にかけて3時間の訓練を受ける。
その後は本人が軍の仕事に就くことを希望しなければ予備軍として待機となる。
ただ、軍と言っても戦闘要員以外にいろんな職種があるからな。体の弱い者はもちろん、各人の希望も考慮されていろんな部署に配属される。」
「軍と警備の関係は?」
「さっき、国の表や裏と影を兼務することは原則ないと言ったけど、例外の1つが軍や。
戦前は、軍が足りないところを影に依頼するという形やったけど、命令系統としては軍が上で影は下、どうしても都合のいいように使われてたな。
意識的にも使いっ走りの傭兵扱いで、情報の共有もなく好き勝手するし、貴重な情報を流しても無駄にするしでな。
首都の壊滅もそれが原因やった。
それで戦後の組織改変で情報管理と伊賀の使い所だけはこっちが握るようにしたんや。」
「軍は納得したのですか?」
「まあ自分らの責任で大敗した訳やし、たとえ反対してもあいつらが気付かんように人の配置くらいやるけどな。」
「えっ、そうなさったのですか?」
「いや、戦前の自分勝手な奴らが責任取ってやめて、後に有能な奴が上に来たからそんなことせんでも今の関係は良好や。
良好な間にうちらの統領が頑張って、人が入れ替わっても揺るがんようにしたんやけどな。」
「いろいろ凄いですね。」
「さて、組織図に戻るけど、第二拠点に関しては誰でも見られる訳ではないからここに置いていくのはもちろん、話題にもせんようにな。
影の番号は頭の1から9が所属を表して、その下が各人の番号になる。
下の番号がないのがリーダーや。
さっき店で世話になった影3、影5はそれぞれのリーダーや。
君が覚えておくのは、
1は拠点長直属。副官、秘書、警護。
2は事務所
3は店内警備
5は警護、君が一番世話になるとこやな。
4と6〜9も警備やが、その分担は今は覚える必要はない。最初はリーダーの顔だけ覚えておけばいい。」
「はい。」
「何で顔が必要かというたら、わしが留守の時、さっき横を通った宿舎で過ごすことになると顔を合わせることもある。
向こうは全員君の顔も名前も知ってるからな。
それと、外で警備の者と出会うことがあっても向こうから話しかけられへん限り声をかけたらあかん。
どんな任務の途中か分からんからな。」
雪野は何やらたいそうなことになったようで焦ったが、時宗の弟子を辞退する気がない以上仕方がないのだろう。
「あと、2日以内に影5が君のアカデミーの宿舎に行くと思う。
防犯カメラの設置にな。部屋の隅々まで確認するはずや。」
「はい。」
「そしたら今日は解散や。
今日買った衣類と靴、鞄、文房具は部屋に持って行って。
値札を取って点数と合計金額だけ出しておいて。
忍具はわしが一度確認するから預かる。」
「はい。」
時宗は忍具店から運んで来たケースを雪野の部屋の横に置き、クナイなどが入った箱だけ出した。
「明日は6時に玄関集合。薬草に水をやるのと収穫。
朝飯のあと、わしが教える学科の進め方の説明。
昼飯のあと、体術系の訓練。
晩飯のあと、アパートに送って行く。
影5が空いてたら拠点の宿舎に寄るかもしれん。」
「はい。」
「今日は大変やったし、ゆっくり休み。
万が一具合でも悪くなったら必ず言うように。」
「はい。ありがとうございます。お休みなさい。」
雪野はケースの中の衣類などを部屋に入れてひと息ついた。
扉を閉めると自分の世界に戻ったようでホッとした。




