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彼の国(かのくに)  作者: 春の雪
 第二章 彼の国にて

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第18話 この国のこと 4

 ビデオ画面には日の国の地図が映し出されている。


 「これが当時伊賀の忍び達が調べて回って描いた日の国の地図や。


 色が付いてる所はそこを治めていた大名や領主がこっちに来た所やな。


 幸い豊臣やら徳川やら、ややこしい大名達は、和の国に残り、西国の大名や城主がこっちにおる状態やった。


 西国の大名達は自分らの近くの敵周辺には優秀な忍びを放ってたけど、伊賀の忍びのように全国に散らばしてはいなかったから大きな状況の変化に気付くのが遅かったんや。」


 「では伊賀の忍びの方達が天下を取ったり?」

 

 「それは無理や。西国に散らばってた伊賀の陽忍、つまり全国各地に何代もにわたって住みついてその土地や支配者の情況を報告する忍びのことな。

 

 西国に居った伊賀の陽忍らはほとんどそのまま日の国に来たけど、織田に潰された後、徳川や東北にかくまわれてた奴らは和の国に残った形になったしな。

 絶対的な人手不足でな。」


 「では、とりあえず追われた元の領地を取り返したとか?」


 「ハハハ、よくわかるな。その通りや。元の伊賀の領地をしっかり囲って領主を立てた。


 ついでに周りの空いてた土地、つまり城や人が和の国に残ったと思われる所に仮城を建てて領主を置いて自分らの土地にしたんや。


 但し、伊賀が取ったと分からんように元々その辺におった領主の名前とか使ってな。」


 「賢いですね。後で取り合いにならないように正当性を確保したのですね。」


 「そうやな。元々伊賀は大名が居らん所で、領地の拡大とかを目指してはなかったからな。

 

 周辺の大名なんかに頼まれて、その敵対する相手の領地や城に陰忍を派遣して中から崩壊させて謝礼をもらう、というような仕事をしてたからな。


 万川集海を読んだんやったら陽忍も陰忍も分かるな?」


 「陰忍は陽忍と違って敵の領地や城に忍び込んで情報収集したり何か仕掛けたりする忍びですね。

 私などにとっては忍びというとそちらのイメージですが。」


 「そうやろな。ドラマや小説にするにはそっちのほうが面白いからな。そのイメージが広がったからな。」

 時宗は少し笑って続けた。


 「今度は前みたいに大軍に潰されることのないように周りを何気なく囲うように上手く領地を広げていったんや。

 西都、大坂、大和にも少しづつ拠点を確保してな。」


 「ですが、結局どこかの時点で皆、おかしいと気づきますよね。」


 「そうやな。だから、はっきりした状況を知られる前に情報操作をして、西都の天皇家が和の国に残ったことだけは隠して、起こったことのあらましを伝えた。

 おかしなことは全部地震のせいにしてな。」

 雪野は思わず吹き出した。

 

 「そして戦国の世を終わらせて皆それぞれの領地を治めるようにする、という方向に持っていったんやけどな。


 当然、自分が全国を治めると言う奴や、戦さはもうウンザリやけど甘いこと言うてたら領地を取られるん違うか、と疑う奴や、いろいろおったようやけどな。」

 

 「では結局は戦に?」


 「いや、覇権主義的な所を潰すかどうかでもめてた時に中の国や北の国が干渉して来たんや。


 それで、内輪でもめてる場合やない、ということでとりあえず合議制で決着したみたいやな。」


 「それで結局中の国と国交を結んだのですね。」

 

 「そうやな。和の国が鎖国をしたんはもう少し後のことで、その時点では行き来があったしな。

 

 中の国もこっちが敵対することなく、文化交流や貿易で敬意を持って仲良くしてれば軍を割いてどうこうする気はなかったんや。」


 「北の国とは?」


 「あの時代ではまだ国交という関係はなかったんや。

 和の国も蝦夷や更に北の地はまだ支配下に置いてた訳ではなかったしな。


 北の国も中の国も、自国の内政や辺境の少数民族に気を配らないかん状況やったしな。」


 「それでは外交も国内の合議制もうまくいってたんですか?」


 「それが人間の情けないところでな。外の脅威があれば内輪はまとまっても外の脅威が無くなればまた自分が上に行きたなるんや。


 ドングリの背くらべみたいな勢力の中でも、ちょっと自分が抜きん出てると思うとテッペンに立ってエラそうにしたがる奴が出て来るんやな。」


 「ではまた戦国時代に逆戻りだったのですか?」


 「そこまではならんかったようや。皆、やっぱり戦いに疲れてたんやろな。


 それに合議制でやって行くって決めた時に誰かが戦さを仕掛けたら他の全員でそれを潰すって決めたからな。」


 「では、とりあえずしばらくはうまくいってたんですね?」


 「しばらくというのがどのくらいの間か、やけどな。

 国外が激動の時代を迎えて、和の国との行き来も盛んになって、この国ものんびりしてられんようになってな。」


 そこで時宗は時計を見た。

 「しかし、そこからは君が自分で本を読んで学んでもらうところやな。一晩や二晩では終わらんからな。」


 「はい。」


 「しばらくは医学薬学をアカデミーの授業に追い付かせること優先やけど、落ち着いたら伊賀の忍びについて教えていくことになるからな。


 裏の歴史についてはその時詳しく教えるからな。」


 「はい。」


 「次は現在のこの国の成り立ちを説明しとかんとな。」

 時宗はそう言って画面を切り換えた。



 

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