表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼の国(かのくに)  作者: 春の雪
 第二章 彼の国にて

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
12/16

第12話 力強い味方

(1)

 時宗が雪野を寝かせて親爺様の横に戻ると、

 「ハハハ、しっかりしてるようで可愛いな。」と親爺様が笑い、他の警備員達も表情が和らいだ。

 

 「しっかりしてても体が全然ついていってないんで、これからたいへんですわ。」

 時宗がつぶやくように言った。


 「まあ、素直な性格みたいだからお前さんが面倒を見るなら大丈夫だ。

 わしにできることがあれば何でも言え。」


 「ありがとうございます。よろしうお頼みします。」

 そう言ってから時宗は改めて親爺様に向かい、姿勢を正して

 「後先になりましたが、お詫びせんとならんことが。」と言った。

 「親爺様に許可を得る前に雪野に裏階段を教えることになって申し訳ありません。」


 「手順的には問題だが仕方なかった。俺が留守で、お前さん達が来た時、既に危険が予測できる状況だった。

 むしろ出直すこともできたのに協力してくれたのだからな。


 それにあの子が裏口の意味をちゃんと理解してニセ影子に知られることなく終わったしな。


 そういえば今日アカデミーで統領のジジイと一緒だったが、お前さん同様やけに真剣にあの子のことを頼んで来てな。」


 「そうでしたか。」


 「とりあえず本人に会って善処すると言って来たが。

 お前さんが本気であの子の面倒を見る気なのもわかったし。


 引き受けよう。俺個人としても忍具店の拠点としても柳生雪野を庇護下におく。


 お前さんが遠出をする時や任務であの子を守れない時など、ここに保護するなり警護をつけるなりするように考えよう。」


 「ありがとうございます。」


 「お前さんがあの子を弟子にしたということも意外な速さで広がっている。 お前さんには手を出せなくても代わりにあの子を狙って来る輩は少なくないだろう。」


 「なるべく早く自分で身を守れるくらいにはします。

 心配なんは、敵が殺す気はないのにわざわざぶつかって行って間違えて殺されるようなタイプってところですか…。」


 「ワッハッハ…弱い者あるあるというやつだな。」そう笑ってから影子12に向かって、

 「そういえば影子、あの子の買い物に付いててどう感じた?性格でも能力でも。」


 「えっ…あ、短い時間でしたので…ただ、決断力が凄いというか、迷うことがないというか。」


 「ほう。」


 「女性の、しかも体術系の訓練など無縁だった方が、いくら私のアドバイスがあったとは言え30種類以上、50点以上の忍衣を買うのに30分かからないなんて驚きです。

 選択にも迷いがなく的確でした。」


 「ほお。

 影3、お前ははどう感じた?」


 「はい。僕もクナイなどを選ぶ間だけの短い時間でしたが…集中力が凄い子だと。


 疲れて腕が上がらなくなっても時宗様が止めるまでは一度も苦しそうな様子は見せず、どうやって時宗様の手本に近づけて投げられるかを真剣に考えて投げてました。」

 

 「なるほどな。

 影5、さっきのあの子の応答や、今の2人の話を聞いて警護の責任者としてどうだ?引き受けられるか?」

 

 影5と呼ばれた男は、

 「大丈夫かと。芯は強いけど無駄に我を通そうとすることはないし、聡明で素直で忍耐強い。問題はないかと。」


 「そうか。ではお前に任せる。必要があれば時宗と相談して決めてくれ。

 

 ただ、統領の話では、外からやって来ていきなり時宗の弟子ということで妬み嫉み(ねた そね)も半端じゃないらしいから気をつけてやってくれ。」

 

 「かしこまりました。」


 (2)

 「では次に、地下の荷物達についてだな。」親爺様が言うと、影3が大画面の映像を切り替えた。

 

 先ほど捕まえて地下の取り調べ室に入れた7人の顔が映し出される。


 影3が1人づつのコードネームや年齢、情報が入ってる限りでの所属や役割を説明する。


 「全員北の国から来てるサソリ隊のメンバーです。

 今回のは第二小隊のメンバーです。メンバーは10人のはずだから、あと3人外にいたのか…。


 今日のメンバーのリーダーは雪野さんにニセ影子を見せた赤サソリという奴かと。」

 

 「誰か今日の目的を吐いた奴いるか?」親爺様が聞くと、

 

 「いえ、2階と1階にいた5人は、何もやっていない自分達は早く解放しろ、と騒いでます。

 

 赤サソリともう1人はまだ何とかごまかそうとしていますね。

 

 真面目に答えないなら訊問を時宗様に代わると言ったらコソコソと取引を持ちかけてきてますが。」

 

 「何や、わしはモテモテや思ってたのにそんなに嫌われとんのか。」


 「時宗様から隠してくれたら後日100万ゴールドと奴らの国の銘酒をくれるそうです。」

 

 「ふざけた奴やな。」

 「はい。北の国の酒より時宗様の薬草酒の方が体にいいと言っておきました。」


 「アホかお前は!わしから逃げるのに100万ゴールドで済むか、て言うてるんや。」


 「すみません!」


 皆が笑ったところで、通信担当の警備員が、

 「時宗様、サソリ隊の頭の黒サソリから時宗様に音声通信が来てます。」とマイクを渡して来た。


 時宗はマイクを受け取り、

 「スピーカーにして地下にも流せ。」

 「はい。」


 「黒サソリか?久しいの。」

 

 「時宗、貴様うちの可愛い部下に何してくれてるんじゃ。」

 

 「お前の部下がうちの可愛い部下に手を上げよってな。逮捕した。」

 

 「関係ない奴まで5人も捕らえたらしいじゃないか。」

 

 「そんなことはない。5人には茶を飲みながら話を聴かせてもらってるだけや。

 おもろいこと教えてくれた奴から順にお帰りいただくから待っといて。」


 「クソが。ウチの部下は口が固い。無駄なことするな。」


 「まあ、部下の忠誠心を測るチャンスや。ゆっくり待っとき。」


 黒サソリは少し間を置いて、

 「あー、そうだ。時宗、お前可愛いお嬢ちゃんの友達ができたらしいな?」


 時宗の眼がスッと細くなり、警備室内に氷が張って砕けた。

 

 ここにいる者は皆凍りついたが、通信機の向こうには時宗が黙ったことしか伝わらない。

 

 黒サソリは得意げに、

 「オレもご挨拶に行くかな…」と笑った。


 時宗は低い声でゆっくりと、

 「わしは今、忙しいからな。お返しのご挨拶に行く暇がないんや。

 

 あ、ノースレッドやノースイエローはすぐには無理でもノースグリーンなら明日にでも行けるな。動物園で待ち合わせしよか?」

 

 今度は黒サソリが黙った。時宗は追い討ちをかけるように、

 「お前は金持ちやなあ…世界中に別荘を持ってて。

 

 しかし固定資産税の安い所ばっかりよくあんなに見つけたなあ、せこい奴や。」


 「………もういい、やめろ。オレもお前も部下は大事だってだけだ。さっさとウチの奴らを放せ。」

 

 そう言って黒サソリは通信を切った。


 「ふん!わしにケンカ売るとは。100年早いわ、ボケが。」時宗がつぶやいた。


 「スノーグリーンには誰がいるんだ?」


 「奴の息子です。奴は休暇には毎日息子を近くの動物園に連れて行って、良いパパをやってます。


 妻と娘はスノーレッドに、年老いた母親がスノーイエローに。」


 「世界中の別荘には?」

 「愛人に産ませた子供や隠し財産が。」


 「全部押さえてあるのか。」

 「当然です。」


 「時宗、お前さんを敵には回したくないな。」親爺様が言うと、そこにいる者は皆はアゴをガクガクさせながら頷いた。


 黒サソリと時宗の会話を聴いて凍りついたのは5階の警備員達だけではなかった。


 取り調べ室に入れられているサソリ隊のメンバー達も、

 ―先に帰ったら口が軽いことになるのか?

 

 それより世界中の別荘って何だ?

 

 ここで何もしゃべらなくても黒サソリ様に口封じされるようなことじゃないのか?


 ここを出たくねえー!


 7人の心の叫びが地下にこだました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ