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萌芽のダンジョンコア  作者: 旅燕
序章

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3/13

これから

 リュールから緊張が抜けたと判断すると、レンはその手を離す。


「それで、これからについてなんだが」


 ――これから?


 リュールは首を傾げる。


「まずはリュールの身を守るために、ダンジョンを発展させていくべきだと思う。今のこの状況だと、あまりにも危険だからな」


 そう言うとレンは、横穴の奥にあるダンジョンコアに目を向けた。


「リュール、アンタは自分のこと……ダンジョンコアについてどれくらい知ってる?」


 レンに促されてリュールはダンジョンコアについて考える。だが、何も思いつかなかった。


「ダンジョンコアっていうのは、その名の通りダンジョンの核だ。どのダンジョンにも必ず一つあって、それがダンジョンを生み出している。魔物がコアを破壊すれば、その強さに応じた魔力が手に入る」


 ――ああ、だからゴブリンはダンジョンコアに攻撃しようとしたのか……


 リュールはすとんと腑に落ちる。


「ダンジョンコアは自分を守るために複雑なダンジョンを生成し、トラップを作り、配下の魔物を生み出す。ダンジョンコア自体には攻撃能力は無いからな」


 しかし次の言葉にリュールは違和感を抱く。


「え? ぼくはそんなことないけど……」


 何しろゴブリンくらいなら倒せるのだから。

 リュールは手を広げると、その上に火球を作ってみせた。


「え? は?」


 レンはそれに唖然とする。一方でエミリは喜んで手を叩く。


「さすがリュール様です!」


 リュールが火球を消すと、レンは何か悟ったような目をする。


「そうだな。リュールが普通なわけないよな……何しろ名前どころか、自我を持つダンジョンコアすら聞いたことも無いからな……」


 ぶつぶつと呟くレンにリュールが聞く。


「普通のダンジョンコアは、どういうものなの?」

「ん? ああ……」


 レンは我に返ると解説に戻る。


「オレが知る限り、ダンジョンコアは自我を持たない。攻撃能力も無い。生き物なのかどうかすら分かっていない。けれど、防衛本能らしきものは持つ。そういう感じだ」

「へえ。じゃあぼくって、よっぽど変わってるんだね」

「……そうだな」


 ツッコミを放棄したレンはそのまま話を進める。


「というわけでだ。リュールにはダンジョンの防衛力強化を進めてほしいんだ。このままじゃ、オレもおちおち外にも出られない」


 確かに、一本の縦穴と小さな横穴があるだけの現在の状態では、防衛力というものは無きに等しいだろう。


「うーん……」


 リュールは試しに腰の高さくらいの壁をイメージして、魔力を込めてみる。するとモコモコと地面が盛り上がり、イメージした通りの壁ができあがった。


「おー」


 ならばと、とりあえず入り口を塞いでしまおうとするが……それはなぜかできる気がしなかった。何となく、地上とダンジョンコアは繋がっていなければならないような気がする。

 そのことをレンに報告するも、レンにも理由は分からないようだった。


「ダンジョンコアにも呼吸が必要なのかもな」


 ひとまず入り口を塞ぐことはやめた。

 リュールは次に、もっとダンジョンを拡げられないかと考える。それをイメージすれば……できそうである。

 まずはこの場所、一層からだ。リュールが魔力を込めると、五メートルくらいの横穴が一瞬にして五十メートル四方くらいの空間になる。

 また、ダンジョンコアを一層に置いておくのは怖いと思ったので、階層を増やす。十メートル四方くらいの小さめの二層を作る。一層と二層を階段で繋ぐと、今度はダンジョンコアに動くように念じた。するとダンジョンコアはするすると空中を移動して……二層に入っていった。


「リュールって、本当にダンジョンコアなんだな」


 レンが呆れ半分に言う。


「あとはここに、魔物を作ればいいんだよね?」


 リュールはまずはマンドレイクを生み出す。


「はーい!」

「こんにちはー!」


 元気な声を上げながら、ぽこぽことマンドレイクが生まれる。その数は十人。


「わーい! 仲間が増えました!」


 エミリはさっそくその輪の中に入って嬉しそうにする。


「リュール、魔力の量は大丈夫そうか?」


 レンの質問にリュールはガッツポーズをする。


「うん! まだまだ大丈夫! あ、でも、名前も付けてあげないといけないから……」

「待て、リュール」


 楽しそうにするリュールを、レンが制止する。


「ダンジョンの魔物にところ構わず名前を付けるのはやめておけ。さっきも言ったが、名付けというのは種から個を切り出す作用がある。名前を付けた瞬間からその魔物はダンジョンから切り離されるから、その魔物の性格なんかが分かってからにした方が良い」

「つまり、どういうこと?」

「名前を付けた魔物はダンジョンから遠く離れても活動可能になるし、生みの親であるダンジョンコアへの反逆も可能になる。だから慎重にしろということだ」


 レンの説明によると、ダンジョンで生まれた魔物は生みのダンジョンコアから魔力が供給されない状態が続くと、一週間ほどで死んでしまうのだそう。名付けで個として切り出された個体は、その欠点を克服するそうだが。


「そっか……」


 名前を付けてあげられないのは残念だが、レンは真面目にリュールの心配をしているのだから聞くべきだろう。

 あとは個として切り出された魔物は、ダンジョンコアからの魔力供給を受けられなくなるので、食料が必要になるとも言われた。


「ということは、魔物は生み出してそこで終わりじゃないんだね。魔物を生かし続けるための魔力が必要ってことか」


 また、この空間を保ち続けるためにも魔力は使う。考えることが多いなとリュールは思う。

 今のところはダンジョンを維持するための魔力消費量よりも、魔力を作る能力の方が上回っている。しかし何かの弾みで超えないように気を付ける必要があるだろう。


「ダンジョンは成長するって言われているし、色々と試してみれば良いんじゃないか?」

「うん、そうしてみるよ」


 それから半日ほどが経って。

 横穴一つで終わっていたリュールのダンジョンは、ダンジョンと言える程度の規模になった。

 深さは十一層。

 獣系の魔物とマンドレイクたちが住む、森林型ダンジョンになった。

 ただし一層目は、レンの要望で薬草や薬木が生えるだけの空間にしてある。


「ここ、どうするんですか?」


 階層を守る魔物の一匹もいない第一層を見て、エミリが首を傾げる。


「ちょっとした考えがあってな」


 レンは口元に笑みを浮かべる。


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