ある神官の成長日誌 〜ジュール編〜 04
「ん? 動脈??」
ガロンは、顎に親指を当てながら考えこんだ。
「鮮やかな赤色の血が流れる、血管のことか?」
ガロンの回答に頷くバルナス。
「そうです。心臓から送り出された血液が流れる動脈は、血液の圧力が高いため、切断されると、勢い良く、血を噴き出します」
「そういう理屈なのじゃな」
ジュールは、今の言葉を頭の中でメモした。
“動脈は、血液の圧力が高い。だから、最初に繋ぐ!!”
“圧力?! なんとなく意味は分かりますが……。あとで、バルナス様にお伺いしましょう”
バルナスが2本めの指を立てた。
「次に、静脈を繋ぎました。静脈というのは……」
バルナスの説明に、食い気味で、ガロンが被せてきた。
「赤黒い血液が流れる血管じゃな? 動脈……よりも、血液の勢いは無い」
バルナスは小さく頷いた。
「そうです。静脈は、心臓に戻る血液が流れています。末端部で何かを下ろして、疲れて戻る血液ですね」
「ほおー」
ガロンは嬉しそうだ。この世界、論理的に人体の仕組みを学べる機会など、なかなか無いのだ。
ジュールは左手の人差し指を見つめながら、今の言葉を頭の中でメモした。
“静脈を流れる血は、疲れて戻る血。疲れてるから……元気がない”
“どうして、疲れているのでしょう? はやく元気になってくださいね”
「止血後、酒で傷口を洗いましたね? これは、血を洗い流すのと、患部を露出させる為ですよね?」
「その通りじゃ。見えなくば、治療は格段に難しくなるでな」
ガロンは、得たりと頷く。
ジュールの脳内メモには、こう記された。
“見えないと、治療は難しい。だから……お酒で洗い流す。ん? どうしてお酒なのですか? あとで、バルナス様に……聞いてみましょう”




