ある神官の成長日誌 〜ジュール編〜 33
時間は、少し遡る。
ジュールが2発の気合弾の魔法 を発射した瞬間、観戦者から、大きなどよめきが起こった。
「ジュールちゃんの気合弾の魔法 、なんだか……小さくね?」
「小さいだけじゃ……ないぞ。左右の大きさが、全く同じに見えねえか?」
何人もの観戦者が、自らの目をこすっていた。
「回復魔法を分割できる、ジュールちゃんだから……」
「ちと待てよ!! 回復魔法と気合弾の魔法 、だいぶ違うぞ?!」
観戦者の困惑を置き去りにして、事態は斜め上の方向に転がっていく。
ジュールは、考えこんでいた。
“2発同時でも、避けられてしまいました。おそらく……左右の大きさを変えても、同じこと……でしょう”
“あとは……”
“時間差?”
ジュールは、顔を上げた。その瞳には、負けん気の色が宿っている。
“なにを思いついた? そろそろ、ヤベーのが……出てきそうだなー”
レイブンは、なにか嫌な予感がした。無意識のうちに、右腰のダガーの柄を叩いた。
「レイブン様。私、思いつきました」
ジュールの声のトーンは、フラットだった。
「試してみろや。気合弾の魔法 なら、魔改造したところで、即死しないだろ?」
レイブンは軽口を叩きながらも、警戒レベルを上げていた。足元に視線を飛ばし、地面の凸凹を確認している。
「なんだか……嫌な予感が……」
バルナスは、右手の杖を持つ手に力を込めた。
「ワシもそれは感じておるが……」
ドワーフのガロンは、続けた。
「どちらに転んでも……今夜は反省会という名目の、飲み会じゃな」
無意識に、いつでも走り出せる態勢を取っていた。
“ワシの短い足では、たどり着く前に全てが終わっているだろうがの”




