ある神官の成長日誌 〜ジュール編〜 30
「は、はいいっ?!」
ジュールの目が、まん丸になった。
レイブンは、さらっと爆弾を投げ込んだ。
「簡単に考えればいいんだ。懐に入られて危ない目に合うなら、入らせなければいい」
「気合弾の魔法 を、牽制に……つかう?」
ジュールは考え込んでいた。レイブンは、そんな姿を、温かく見守っている。
暫くして、ジュールが顔を上げた。その瞳には、強い決意と、それ以上に躊躇いの感情が揺れていた。
「レイブン様。私、気合弾の魔法 を撃ちます」
“私、気合弾の魔法 を人に向けて撃つのは……初めてです”
「いつでもいいぞー」
意図的に、軽い口調。
「気合弾の魔法 なら、当たっても死なないからな。それに……」
ニヤリと笑って続けた。
「骨が折れたら、ジュールが治してくれるんだろ?」
「はいっ!! キレイに治します!」
ジュールは、胸の前で手を組んだ。目を閉じる。
心のなかで、大地母神に祈った。
“大地母神様。レイブン様を気合弾の魔法 で牽制したいです”
ジュールは祈りの言葉を良く知らない。この言葉は、彼女オリジナルの祈りだ。
“私の右拳に、気合弾の魔法 ……1発分の、御力をお貸しください”
ジュールの祈りを受け、右拳に神の力が宿った。
“回復魔法と違って……熱い、ですね。熱く、荒々しい御力です”
ジュールはゆっくりと目を開けた。組んでいた手を開く。
“右拳が、淡く光っています”
両手を握る。
左手は、顔の前。右手は、右腰。無意識に左側を少し前に出した。
“気合弾の魔法 ……神様に御力を借りて、目に見えない衝撃波を放つ魔法……”
ジュールは神聖魔法を良く知らない。書物とバルナスから教えられた知識が全てだ。
その知識の中から、気合弾の魔法 の発動トリガーについての部分を思い出す。
“気合弾の魔法 の発動トリガーは……単音節の、神聖語”




