ある神官の成長日誌 〜ジュール編〜 27
「次に、患部を切り開かなくても、見えるようにする方法だが……経験不足という免罪符がある。見ないと、怖くて治せない……とでも言わせれば、完璧じゃ」
「確かに、スジは通るな……」
「で、ワシの場合じゃ。こっちはもっと簡単じゃな。ジュールへの教導……で押し切るつもりじゃ」
「………………」
レイブンは暫し絶句していた。ややあって……。
「脳筋すぎるだろ……」
「秘密の漏洩、心配しなくて良いのじゃぞ。脳筋、万々歳であろ?」
ガロンは満面の笑みを浮かべていた。
「現場で秘密漏洩の危険が無さそうなのは分かった。神殿の上の方は?」
「そちらは、僕がなんとかします」
バルナスが話に入ってきた。ガロンに輪をかけて、悪い顔をしていた。
「うっわー。魔王だ。魔王がいるぞー」
レイブンは嬉しそうだ。
「魔王様、私たちを、お導き下さい」
ジュールもノリノリである。
「任せておきたまえ」
バルナスはふんぞり返った。
「冗談はさておき……」
レイブンが真面目にもどった。
「どういう悪だくみをするつもりだ?」
「治療件数を増やして、神殿に利益を与えます。で、利益を現場に還元します」
「バルナスらしい、解決方法だな。具体的には?」
「現場の神官の献身により、今までよりも多くの患者の治療ができたことにします。そのうえで、現場の神官に特別賞与を払うように、交渉します」
「あくまで、現場が頑張った……ってことにするのか?!」
「そうです。ここで釘を刺しておきますけどね。頑張ったのは技術だけじゃなくて、根性なんだと」
「根性で頑張ってる……ってことにして、誤魔化すのか!」
レイブンは、大きくため息をついた。
「ガロンのおっさんと、バルナス。お前らを組ませちゃいけねぇのが、良くわかった」
表情こそ苦笑を浮かべていたが、先ほどのようなピリピリした様子は、影を潜めていた。
「そうなると、オレは治療担当じゃない戦神の神官と、模擬戦でもやってるぞ」
「真剣を使って、ガンガン模擬戦をやってくれれば……それで良いぞ。怪我人が増えるのは、大歓迎じゃ」
ガロンの言葉に、レイブンはニヤリと笑った。
「鍛錬としては、最上級じゃねぇか」
常識枠の顔をしていたが、この男も、なにかおかしい。




