ある神官の成長日誌 〜ジュール編〜 26
「次に、お主が神殿で回復魔法を実践しているという……宣伝効果じゃ。治療を頼みにくる患者が、右肩上がりに跳ね上がるぞ」
「診てもらうなら、おっさんよりも、若くて美人の聖女様の方がいいもんな……」
レイブンの言葉は、世の男性の声を代弁していた。
「で、ここまでくるとな。いくら呑気な大地母神様の使徒達も、お主の価値に気づいて、囲い込みに入るぞ」
「それは……困ります」
ジュールの眉が、へにょんと落ちた。
「私は、バルナス様のメイドですから」
胸をはって言い切る姿が、愛らしい。バルナスは、思わずジュールの頭を撫でていた。
「いつも、ありがとう」
ジュールは、恥ずかしそうに笑った。
「勿体ないお言葉です」
「回復魔法……分割版の教導ってことで、押し切るってことだな?」
レイブンが尋ねた。
「そうじゃ」
ガロンが答える。ガロンは悪い顔をしてみせた。
「仮定の検証は、どさくさに紛れて行うつもりじゃ」
「うっわー。ガロンのおっさん、めちゃくちゃ悪い顔してるぞ」
レイブンは嬉しそうだ。
次の瞬間、表情を引き締めた。
「どさくさ紛れは、良いけどさ。秘密の漏洩は、大丈夫なのか?」
レイブンはさらに真剣な表情になった。
「口にしない……つもりなんだろうけど、目の前で見せるんだろ? 若い神官に、盗まれないか?」
ガロンは慌てず、騒がず、こう答えた。
「秘密の漏洩については、問題なかろ」
「そう言い切る根拠は?」
「戦神の神官は、ワシも含めて考え方が戦士に近いからの。目的のためには、手段は選ばん。また、脳筋がそろっておる」
「まあ、それはなんとなく分かる。それと、秘密の漏洩が、どう繋がるんだ?」
「ワシやジュールが、神への祈りの言葉の簡略化や、患部を切り開かなくても、見えるようにする方法を使っておったとする」
「仮定の検証だからな」
「まずは、ジュールの場合じゃな。神への祈りの言葉の簡略化は、出自という免罪符がある。教義をよく知らないから、祈りの言葉をよく知らない……と誤魔化せる」
「誤魔化されて……くれるのか?」
「間違いなくの」




