ある神官の成長日誌 〜ジュール編〜 24
「最初の仮定で、治療時間が半分になる。その状態で、次の仮定を実行したとしたら?」
「もしかして……」
レイブンが続けた。
「脳が焼き切れる前に、治療が完了する?」
「何も問題が発生しなければ……の」
「それって……何かトラブルが発生したら、術者が死ぬじゃねぇか……」
レイブンは嫌そうな顔をしていた。
「いいか、ジュールよ」
ガロンが真剣な表情でジュールを見た。
「はい」
ジュールも真剣だ。
「この2つの仮定。ワシら以外に話してはならんぞ。特に、最初の仮定に関しては、絶対にならん。よいな?」
「肝に銘じます」
「この仮定のなにが危険度が高いか、補足しますね……」
バルナスが会話に入ってきた。
「まずは、最初の仮定。神への祈りの言葉の簡略化……。これが公表されると、神殿からの反発が、ものすごく高くなります」
「なんでだよ? 治療時間が半分になるんだろ?」
レイブンの疑問も最もだ。バルナスが説明を続ける。
「多くの神官にとって、祈りの言葉は絶対ですから。改変なんて、誰も考えません」
「世の中には、狂信者もいるでの。狂信者にとって、祈りの言葉の改変は……神への冒涜、そのものじゃ」
ガロンは大きくため息をついた。
「特に、至高神様の信徒には……狂信者が多い」
「神殿の経営的には、この仮定は喉から手が出るほど欲しいはずです。でも、信徒の反発を考えると、表立っては受け入れられない」
バルナスは、ため息をついた。
「経営よりも、権威とか前例とかを取る神殿が多くなるでしょうから……ジュールは間違いなく排斥されます」
「馬鹿じゃないのか? 利益よりも面子をとるのかよ?!」
レイブンの言葉は、彼らの内心を反映していた。
「で、2番目の仮定。患部を切り開かなくても、見えるようにする方法。神聖魔法を使いながら、脳内で患部の詳細を想像する……方法ですね。これが公表されると、神官が摺りつぶされます」
「!!!」
レイブンは絶句していた。
「絶対に後遺症を残したくない貴族とか、大金持ちとかの治療に、駆け出しの神官が繰り出される未来しか……浮かびません」
「若い神官なら、死んでも惜しくないってか?」
レイブンは憤っていた。




