ある神官の成長日誌 〜ジュール編〜 19
「では、力技……というのは?」
「切り傷に対する、分割回復魔法と違い、骨折や捻挫に対する通常回復魔法は、患部が見えんからの。完治するまで、神の御力を注ぎ続ける必要がある。だから、力技じゃ」
ガロンの説明を受け、ジュールが考えこんでいる。他の3人は、そんなジュールの様子を見守っている。
「ガロン様」
長い時間考えこんでいたジュールが、顔を上げた。
「なんぞ?」
「神様への祈りの言葉。これを、もう少し具体的な言葉にする……というのは、どうでしょうか?」
「具体的……とな?」
「閉鎖骨折の場合、骨を繋ぎたいので、御力をお貸しください……ですよね?」
「しかり」
「これを、こうしては……どうでしょうか?」
ジュールが続ける。
「折れた骨を、元の1本に戻したいです。御力をお貸しください……と」
「確かに具体的じゃ。それで、なにが変わってくるかの?」
ジュールは、両手を肩幅位に開いてみせた。
「最初のお祈りの言葉で、神様が貸して頂ける御力を、これぐらいとします」
「ふむふむ」
ジュールは、両手の幅を、半分ぐらいにしてみせた。
「具体的にしたら、神様が貸して頂ける御力が、これぐらいになるような気がします」
「??? なんで、そうなる?」
「最初の言葉では、神様も、どれぐらいの御力が必要なのか、分かりません。なので、多めにお貸しくださると思います」
「確かにの」
「具体的にしたら、神様は……こう思われるハズです。それなら、これ位で足りるな……と」
「!!!」
ガロンが衝撃を受けた表情で、固まった。
「ジュールの発想、まるで、古代語魔法の定義付け……みたいだね」
バルナスが小さく呟いた。
「神聖魔法に……古代語魔法の定義付けを、組み込む? 出来る出来ないは……別として、発想としては、アリ……?」
バルナスは思考の海に沈んだ。




