ある神官の成長日誌 〜ジュール編〜 16
「意図した効果が得られない?」
バルナスは、暫し考えた。
「血管の修復に必要以上の力が入って、筋肉と神経の修復に、力が足りなくなる……なんて感じですか?」
ガロンは大きく頷いた。
「逆もしかり」
「周りの神官からは、良く言われたものだ。そんなやり方を追うよりも、普通の回復魔法の練度を上げた方が、確実だろう……とな」
「しかし、ガロン師は諦めなかった」
「戦場で戦友を助けるためには、ワシが分割回復魔法をモノにする必要が、あったでな」
「ガロン様」
「ん? なんぞ?」
ジュールは、深々と頭を下げた。
「分割回復魔法のご教示、感謝いたします」
対するガロンは……
「よいよい。お主の回復魔法の腕が上がれば、ワシら全員の生存確率が、跳ね上がるでな」
ニッコリと笑っていた。
「はい。精進いたします」
ジュールは小さく微笑んだ。次の瞬間、彼女の瞳に不安の色がさす。
「で、ガロン様。今回のご教示、報酬は……何をお支払いしたら……よろしいですか?」
「報酬?!」
ガロンは鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしていた。
「そんなモノは、いらんぞ」
「しかしっ!」
ジュールは食い下がる。彼女にしては、非常に珍しい行為だ。
「ガロン様が血の滲むような努力と、信じられないぐらいの、長い期間をかけて体得した、究極の職人技です!!」
息を大きく吸って、こう続ける。
「対価も無しに、ご教示されるワケには、まいりません!!」
そんなジュールの言葉を受け、ガロンはニッコリ笑った。
「いいか、ジュール。お主の普段の献身、それに対する正当な対価じゃ。遠慮せず、受け取っておけ」
ガロンは、ここで小さく苦笑した。
「最も、この程度では、お主の献身に対する対価としては、安すぎるがの」
ジュールは無言で頭を下げた。
「お言葉、ありがたく」




