ある神官の成長日誌 〜ジュール編〜 15
「1人が血管を繋ぎ、止血が完了したら、もう1人が傷口を塞ぐ。完全には治療せず、次の患者へ。回復魔法師が離れたら、あとは薬師の出番じゃ……」
ジュールは小さく呟いた。
「ガロン様の、分割回復魔法と……同じ、です」
ガロンは、大きく頷いた。
「これがヒントとなり、ワシは、分割回復魔法を、手に入れるに至った」
ガロンは、ガリガリと頭をかいた。
「いまでこそ、至った……なんて言っておるが、モノにするのには、とてつもなく時間が掛かったぞ。それこそ、数年では無く、数十年単位でな」
バルナスは眉間を人差し指でグリグリしていた。
「試行錯誤の時間単位が、桁違いなのは……長命種ならでは、というべきなのでしょうが……」
「オレらじゃ、モノにする前に死んじまうな」
レイブンの言葉に、残りの2人はうんうんと頷いていた。
「ワシが、分割回復魔法を使えるようになったのは、こういう経緯じゃ」
「ありがとう……ございます」
ジュールはペコリと頭を下げた。
「ガロン師、お伺いしても?」
バルナスが尋ねた。
「なんぞ?」
「試行錯誤の時、一番多かった失敗は、なんでしたか?」
「そうさのう……」
ガロンは顎に手のひらをあてて、しばし考えた。
「一番多かったのは、回復魔法が、発動しない現象じゃな」
「発動しない? 暴発では無く?」
ガロンは考え考え、言葉を紡ぐ。
「神の御力は手のひらに集まっておるのに、回復魔法が発動しない」
「その場合、どうされるのです?」
「あきらめて、威力が半分の、通常回復魔法として扱う」
「小さな回復魔法を……2つ?」
「そうだ」
バルナスは、とりあえず納得したらしい。続けて尋ねる。
「他には?」
「他は……」
ガロンは記憶を辿った。
「左右の手のバランスが崩れて、意図した効果が得られなかったかの」




