ある神官の成長日誌 〜ジュール編〜 14
「あの時は負け戦での。ワシは傭兵団の皆と共に、仮拠点まで撤退をしておった」
「仮拠点……ですか?」
バルナスは、ピンときていない様子だ。
「傭兵団が戦場の近くに作る、食料と予備武器を集めた、仮の拠点だよ」
戦士であるレイブンが答えた。一息入れて、続ける。
「仮拠点には、食料だけじゃなくて、非戦闘員もいる。飯炊きとか、回復魔法師とか、薬師な? だから、仮拠点まで戻れれば、治療が受けられて、命を拾える……」
バルナスは、納得したようだ。
「話の腰を折ってしまいましたね。ガロン師、続きをお願いします」
「うむ」
ガロンが続ける。
「ワシは、傷ついた戦友に対して回復魔法を使いながら、必死で撤退をしていた」
ガロンは、ため息をついた。
「当時のワシは、普通の回復魔法しか使えなくてな。いま程、回復速度が速く無かった」
ガロンはしばし言葉を発することが出来なかった。
「何人もの戦友を助けられず、途中で置いてきてしまった」
「………………」
誰も皆、無言だった。
しばらくして、ガロンが話し出す。
「仮拠点までたどり着き、一番重症の戦友を、回復魔法師の所まで連れて行ったら……」
「連れて行ったら?」
レイブンが続きを促した。
「そこには、人間の回復魔法師が、2人控えておった。で、彼らは患者を左右から囲むと、同時に回復魔法を使い始めたのじゃ」
「そこまでの重症……ということですか? 1人では、間に合わないぐらいの」
バルナスの問に、ガロンが答えた。
「否。1人でも、十分対処可能であったな」
「敢えて、2人で?」
「そうじゃ。敢えて2人で治療しておった。ワシは抗議しようとしたのだが、彼らの回復魔法の使い方を見て、息を飲んだ」
ガロンは一息入れて、続きを話し出す。




