ある神官の成長日誌 〜ジュール編〜 13
「ガロン師に、お伺いしたいことがあります」
ひとしきり愛するジュールを愛でたら、バルナスは満足したらしい。解放されたジュールは、真っ赤な顔でバルナスの背中に隠れた。
「ん? なんじゃ?」
ガロンは、自ら鍋の湯をカップに注ぎ、茶を淹れていた。一口飲んで、顔をしかめる。ジュールの淹れてくれた茶よりも、かなり不味かったらしい。
「ジュールの分割回復魔法、点数をつけると、何点ですか?」
バルナスは、そんなガロンの様子を意図的に無視した。
ジュールも、バルナスの背中から顔を出した。その両手は、バルナスのローブを、軽くつかんでいた。
「ジュールの分割回復魔法?」
ガロンは、ニッコリ笑って続けた。
「100点満点、いや、それを超えておるな。120点じゃ!」
カップを置くと、小さく拍手した。つられて、隣のレイブンも拍手している。
「その評価の根拠を、お伺いしても?」
「今日初めて、分割回復魔法を使った娘じゃぞ? 最初の実践の時、粗削りながらも、完成させただけでも驚異的であろ? のみならず、先程はかなり洗練されておった。ここまで回復魔法の制御を、繊細に行えるような術者は、120点を付けても、なんらおかしくないからの」
「ありがとう……ございます」
ジュールは、ペコリと頭を下げた。
「ガロン様は、どのようにして、分割回復魔法を思いついたのですか?」
ジュールの目は、これ以上ないぐらいに真剣だった。
「ちと、込み入った話になるぞ?」
ガロンが話し始めた。
「あれは、ワシが若い頃の話じゃ。ワシは、傭兵団の客分として、彼らと行動を共にしておった」
「ガロンのおっさん、昔からやってることは変わらないんだなー」
戦士であるレイブンが混ぜっ返す。
ガロンは小さな身体を、思いっ切り……仰け反らせた。そして、こう続ける。
「ワシにとって、信仰とは、戦いじゃ。戦場という場所は、これ以上無いほど適した祈りの場である」
ガロンの熱い独白が続く。
「傭兵団の客分という立場は、ワシにとって、非常に居心地が良いからの」
「これで……」
レイブンが続けた。
「戦闘狂じゃ無いってんだから、おかしいよな」
レイブンの呟きは、他の2 人にも共感を持って迎えられたらしい。うんうんと頷いていた。




