ある神官の成長日誌 〜ジュール編〜 12
「???」
ジュールはキョトトンとしていた。
「ガロン様。それは、当たり前のことでは? お茶は美味しく淹れたいですから」
ガロンは苦笑を浮かべた。
「当たり前では……無いぞ。現に、ワシやレイブンが茶を淹れると、毎回味が違うからの」
「茶って、そういうモンじゃねえのか?」
レイブンが混ぜっ返す。
「レイブン。そういうものでは、無いようですよ?」
バルナスだ。
「ジュールのお茶が、安定しているのは、僕も気がついていました。彼女の技術と思っていましたが、器用さも影響しているのですね」
「おそらく……な。この娘の場合、技術を器用さで増幅しているようにしか、見えんの」
「なんつう力技だよ……」
レイブンのボヤキが、夜の静寂に溶けていく。
「無自覚な力技じゃ」
ガロンの呟きを引き連れて。
そんなジュールを見ていたバルナスは、こう思った。
“少し、視野狭窄になっていますね。これは……荒療治が必要ですか、ね?”
バルナスがジュールを抱き寄せ、頭を撫でた。
「ジュールは、頑張り屋さんですね」
「バ、バルナス様っ?!」
ジュールは、突然の主人の行動に、ひっくり返った声をあげた。彼女の耳が、赤くなって行く。
「ジュール。よく聞いて下さい」
バルナスは、ジュールの目を見ながら、続けた。
「頑張りすぎては、いけませんよ」
「は、はひ……」
ジュールの目は、グルグルしていた。
「特に、魔法の練習をするときは、頑張りすぎては絶対にダメです。神に力を借りる神官の魔法も、制御するのは術者ですからね?」
「わ、わかりました! わかりましたから、離して下さい! 恥ずかしいです……」
「相変わらず、偏愛じゃのう」
「あれが噂の、ラブラブってヤツだな」
ガロンとレイブンは、バカップルのいちゃいちゃを、覚めた目で見ていた。




