ある神官の成長日誌 〜ジュール編〜 11
「だいぶ、慣れたようじゃな。お主はスジが良い」
ガロンがジュールを褒めていた。
「魔術師殿。ジュールの癒やしの光の太さを、1とするぞ」
「あれが、基準ということですね?」
ジュールの右隣で、焚き火越しに回復魔法を観察していたバルナスが答えた。
「次は、ワシじゃ」
ガロンはレイブンを見た。
「レイブン。もう一度頼む」
「ん……」
レイブンは、黙って自らの左手の甲に傷を付けた。
「治療していくぞ」
ガロンの両手の指先に、癒やしの光が宿った。レイブンの傷口に向かって、照射されていく。
「おや?」
観察していたバルナスが、思わず声を上げた。
「私の癒やしの光と比べて…………半分の細さ……です」
ジュールの言葉が、空に消えていく。
「お主は……」
ドワーフのガロンが続ける。
「人間にしては、癒やしの光が細い。人間にしては、器用じゃからの」
「私、器用……なんですか?」
ジュールは、首を傾げた。
「器用じゃよ」
ガロンが続けた。
「お主の淹れてくれる茶は、いつも美味い。美味いだけでなく、味が驚くほど安定しておる」
「お待ちください」
ジュールがガロンを遮った。
「同じ茶葉で、同じように淹れれば、同じ味になります」
その言葉をうけ、ガロンは天を仰いだ。
「無自覚……であったか……」
「ん? どういうこった?」
戦士のレイブンが尋ねた。
「皆に説明してやる。ジュール。良く聞くのじゃ」
「お伺いします」
ガロンが説明を始めた。
「竈門で沸かすのと違い、焚き火は、鍋への火の入り方が毎回違う。ここまでは、良いか?」
「はい」
「お主の場合、焚き火で沸かした湯であっても、味が驚くほど安定しておる。恐らくは、匙でかき混ぜている速さと、強さで調整しているのじゃろう」




