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切望の夜

いつまでそうしていただろうか。

ふと愛美は顔を上げると薄く微笑んで一言。

「お風呂、入っちゃうね…汚いし…。」

鵺は切な気な顔でそれを見ていたが、愛美の手を取るとこう返した。

「俺も一緒に…いいかな。」

その言葉に愛美は一瞬驚いた顔を見せたが、頬を赤く染めながら頷く。

二人並んで狭い脱衣所で1枚、また1枚と服を脱いで⸺一糸まとわぬ姿になる。

「全部見せるのは初めて…だね…。」

そう微笑む愛美に鵺の肚がずくんと動く。

鵺はそれを隠しながら愛美をバスルームに誘うと、その身体を丹念に洗ってゆく。

フローラルブーケの香りが漂い、愛美の身体は触れられるたびにぴくり、と反応する。

シャワーですっかり清められた愛美をみて鵺は一言。

「すごく…きれいだよ…。」


切れ長の眼差しがこちらをじっと見据えている。

愛美は急に気恥ずかしくなりいそいそと浴槽に入る。

が、鵺も後を追って狭い浴槽に入ってきた。

ザバァ、と音を立てて湯が勢い良く流れていく。

鵺は愛美を後ろから抱きしめる形になると、耳、首筋、そして背中へと丁寧に口づけを落としてゆく。

「鵺…待って…お手当…用意してな…ぁ…」

本能と理性の間で必死に紡ぎだした言葉は鵺の一言でかき消された。

「これはプライベートな時間。なんにも気にしなくていい。もちろん愛美が嫌じゃなければ、ね?」


それを聞いた愛美は思わず振り返り、鵺の顔を見る。

優しげに微笑んでこちらを見る瞳。色素の薄い肌はやや赤く染まっている。

鵺の手が愛美の頬に当てられ、唇が重なり合う。

最初は確かめるように優しく。そして次第に深く。

二人の吐息が荒くなり、唇が離れると鵺はこう言った。

「愛美…。信じてくれなくてもいい。俺は君が好きだ。だから烏に無理やり施術されたと聞いて…居ても立ってもいられなくて…」

その言葉に愛美は目を丸くしている。

そして震える声で尋ねる。

「鵺…それ…ほんとなの…?」

瞳には涙が滲み、フルフルと華奢な肩が震えている。

鵺はそっとその涙を拭うと愛美を抱きしめてこう返した。

「本当だよ…。好きだ。…いや、愛してる…。営業のための言葉なんかじゃないよ…。信じてくれる…?」

それを聞いた愛美はぎゅっと鵺を抱きしめ返す。

堪えていた涙がボロボロとあふれ出し、鵺の胸を濡らす。

「嬉しい…!!私も鵺のこと好き…!!なんでかな…初めて会ったときから、懐かしい感じがするの…。」

その言葉に鵺は再び愛美に口づけると、こう言った。

「俺の気持ち、証明してもいい?」


狭いバスルームに水音が響く。

二人繋がって貪るように求め合うその姿は湯気に覆われてモネの絵画のような神聖さすら感じさせる。

「愛美…!愛美…あぁ…愛してる…。」

その言葉に愛美の身体全ては喜びで打ち震え、声にならない声をあげることしかできない。

「鵺…!!わたし…ッ!!嬉しい…嬉しいよぉ…ッ」

やがて愛美の脊髄からビリビリと電気のようなものが走り、その小さな背が仰け反り⸺

「鵺ぇ…!!」

小さな絶叫と共に愛美が絶頂を迎えた。


くたりと倒れ込んだ愛美の身体を鵺は両手で支えると、耳元で囁く。

「まだまだ愛し足りない…いいよね…?」

小さなアパートの一室の、小さなバスルームでの饗宴。

永遠に終わらないのではないかと思える快楽に二人は溺れていった。



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