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緊急招集

 ここは灰色の雲が空を覆うシベリアの大地。今この瞬間、一体の魔獣が制圧されたところだ。現場は原因究明に派遣された魔術師達と怪我人の手当てで騒然としていた。


(全く……早く店に戻らないと……)

 本来ならば現場にいる中(なんなら全魔術師の中)で最高位の魔術師である俺が直接指揮を取るべきなのだが……店がある以上、長居はしてられない。


(そーっとそーっと……)

 俺は人目を避けてその場を後にしようとしたが……


「おーい! 辰巳ぃー! 何やってんだー?」


 後方から元気で面倒くさい声が聞こえる……。


「あぁ、クソッ!」

(よりにもよってあの野郎……)

 そして振り向いた先にいたのは赤髪で炎の描かれたコートを羽織る男。

 俺の同期であり、祈祷術によって神の炎を操る魔術師、李煌だ。


「なんでそんなピリピリしてんだよ、1年ぶりの再会なんだからもっと明るくいこうぜ?」


「一年ぶりだ? 2ヶ月前に一緒に飯食ったばかりじゃねぇか」


「あれ? そうだったか?」


「相変わらず……お前鶏かよ」


 するともう一人の男が空から降りてきた。


「変わりなさそうで安心したぞ、我が友よ」


 そう言いながら現れたのはもう一人の同期、青いマントと白いバンダナが特徴的な白魔術師のハートだ。


「あ、ハートも来た! よぉ、一年ぶりだな!」


「違うな、正確には10ヶ月と6日だ」


「げ、相変わらずなんでも計算してんだな……」


 俺たち3人は同期の中でも抜きん出ていた。それぞれ得意なものこそ違うが、3人揃って飛び級を繰り返し、俺はグランドマスター、李煌はマスターの一つ上であるプライムマスターでも指折りの武闘派、ハートはその頭の良さで魔術研究部門の主任を務めている。

 そうして話しているとハートが真剣な顔で口を開いた。


「辰巳、李煌、緊急招集だそうだ。今回の魔獣出現について話をすると」


 それは協会より出された招集令。


「分かった、すぐに向かう」「ちぇ、あのジジイどもと話すの疲れんだよ……」


 そうしてまたゲートを開き、会議室まで入った。


 ◆◇◆◇


「おぉグランドマスター殿にハート殿、李煌殿まで。よくお越しくださいました」


 そう口を開いたのは紺色のローブを羽織った老人。その背中には真っ赤な薔薇が描かれている。

 先ほどの三人兄弟の父でありローズ家の現当主、ブレイド・ローズ氏だ。


「店のこともありますが、出ないわけにもいかないでしょう? さぁ、早く始めましょう」


 そうして俺が席に着くと会議室の巨大な扉が開き、周りとは一線を画す雰囲気を纏った四人の魔術師達が入ってきた。


(来やがったか……)

 俺が彼らを睨むとその中の一人がそれを気取った。一人の老人が近づいてくる。


(クソッ……)

 俺が身構えるとその肩に手が置かれた。


「おお〜天薙君! 元気にやっとるかね?」


 そうして放たれた言葉は雰囲気に似つかわしくないほど気さくな物だった。


「ペンドラゴン様。お変わりなさそうで安心いたしました」


 それに続くように周りの方々も声をかけてくる。


「最後に会ったのは一年前。いやはや月日が経つのは早いものですわね」「これも我が運命……」「調子も良さそうじゃ」


「あはは、皆様もお元気そうで……」


 俺の体は強張り、冷や汗がうっすらと流れた。

 この人達はグランドマスターである俺でも無碍には出来ない。魔術の四大流派、それぞれで最も古く最も権力を持った四つの一族、「四大家」の長達だ。

 陰陽道の安倍氏、神霊・祈祷術の柳氏、白・黒魔術のペンドラゴン家、法力・念道のシッダールタ一族。

 その影響力は計り知れず、過去にはペンドラゴン家が機嫌を損ねたことで2年間協会がまともに機能しないという事件もあった。


「立ち話もなんだ、話し合いを始めようか……」


 そして魔獣発生事件への特別会議が始まった。

さて、いかがでしたでしょうか?

今回は物語でも重要になってくる「四大家」が登場いたしました。四大家の元ネタは中国、唐の時代に名を馳せた書道の達人、虞世南ぐせいなん欧陽詢おうようじゅん褚遂良ちょすいりょう顔真卿がんしんけいの「唐の四大家」です。

さて、これからどうなるのか……弟子はどうなっているのか次回に期待していただけると嬉しいです。

それでは、感想や評価、ブックマーク登録などしていただけると嬉しいです。

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