弟子
ここは世界のどこかにある統一魔術協会の本部。そこの会議室は今、とてつもなく重く鋭い空気が充満していた。
(四大家にローズ家、会長のジジイにあっちは呪詛専門の乱獄一門か……)
どの一族、どの人物も魔術界に多大な影響力を持つ超一流だ。
「さて、揃ったようじゃな。それでは緊急の統一魔術協会会議を始める」
そして会長の老人の一声で会議が始まった。
「本日の議題は知っての通り、今年になって異常なほど急増した大型魔獣の発生についてじゃ」
すると会議室の中央にグラフが二つ浮かび上がる。
「こんにちは、魔術研究部門魔獣科のコルガと申します。こちらのグラフをご覧ください。これは魔術協会発足より記録されている魔獣の発生数、その大きさ、破壊力を可視化した、所謂「魔獣の危険度」のグラフです。大型魔獣は例年発生しても一体、中型や小型を合計してもグラフの値は「20」から大きく変動することはありませんでした」
その時、グラフにもう一つデータが追加された。
「こちらは今年、本日6月20日時点でのデータです。今までの記録では大型魔獣6体、中型42体、小型81体が発生しており、計算の結果値としては「35」となりました。この値は史上初、異常値と言えるでしょう」
(確かに……発生方法を考えればこう頻繁に起こって良いはずがない……)
魔獣の発生は言ってしまえば災害と変わらない。
俺たちの魔術は「暗黒世界」と呼ばれる別の場所に満ちているエネルギー、それを魔術構築式に流し込むことで魔術を発動する。
しかしこの地球が有するエネルギーにもそれと酷似したものがある。
そのエネルギーは「魔力」と呼ばれ、不定期に地面から噴き出すことがある。もちろん機械などでは感知することはできないし、非常に微弱なものだ。その噴き出してきたエネルギーを魔術的な適応力の高い動物が浴びることで魔獣となる。
(しかし普通であればそんなことはかなりの低確率。ましてや大型なんて五年に一体いるかどうかだぞ……)
そんな低確率が今年になって半分で既にここまで起きているのは何か裏があると思えてならない。
「うむ、ハートよ。魔術研究部門の主任として、この件……どう見る?」
会長のジジイがハートに尋ねた。
「はい、この件。何者かが裏で糸を引いている……そう考えても良いかと存じます」
そして毅然と言い放った。さらに多くの魔術師達が賛同する。
「即刻、この件を徹底的に調べ上げるための実力部隊の編成、および派遣を要請します」
「うむ、承知した。それでは実力部隊を「特別魔術部隊」通称「特魔隊」とし、本部を魔術研究部門に設置する。メンバーは後日選出の後、皆に通達しよう」
『はっ!』
そうして臨時会議は終わり、皆が解散し始めた。
(ようやく帰れる……)
この件に関して俺は無関係なわけではないが面倒ごとはごめんだ。そうして帰ろうとすると四大家の安倍龍臣殿が話しかけてくる。
「グランドマスター、天薙辰巳殿。貴殿……弟子の件はどうなっているのかな?」
「ゔっ……」
俺は瞬間的に凍りついた。
そう、俺こと天薙辰巳には……本来いるはずの弟子がいないのだ。実はマスターとなるためにも弟子を育てたという実績が必要なのだが、俺がマスターに昇格した歳は14。流石に若すぎるということで今まで避けてきたのだ。
しかし俺もグランドマスターになってからすでに4年、歳も28だ。
流石にもう逃れられない。
「いやぁ……私なんかよりももっと適任の方がいらっしゃるでしょう? そちらの方にお願いした方が……」
そう言って躱そうとするが龍臣殿に逃す気は毛頭ないらしい。
「いや、歴代の中でも特段優秀な君には後継を育てる義務があるのだ……なので、こちらで選んでおいたよ」
「……は?」
彼の言葉に思考が追いつかない。
「ま、後日君の元に向かわせるよ。では……」
そう言って龍臣殿は会議室を出た。
(……嘘だろ……おい……)
俺の胸中に人生最大レベルの不安が込み上げていた。
さて、いかがでしたでしょうか?
今回は会議の様子とついに弟子の情報が出てきました! どうにかして次回には出したいですね……。
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