グランドマスターはコンビニ店員?
ここは東京、その一角にあるボロアパートで一つの目覚まし時計が鳴り響く。
―ジリリリリリリリリリ―
「ん……んあ? もう朝かよ……」
1人の男が目覚まし時計を止めて、だが立ち上がらずに床を這うように移動して水垢まみれの洗面台の前でようやく立ち上がった。
これが俺、名前は天薙辰巳。
このアパートに住むしがないコンビニ店員だ。髪は寝癖でひどく乱れており、近くにはポテトチップスの袋が転がっている。
(今日も朝から仕事……だりぃ……)
煤まみれになった時代遅れのガスコンロに部屋には電球一つのみ、器は所々欠けており浴槽はおまけ程度の広さ。
そんな中で俺は身支度を済ませ、指輪を通したネックレスを首にかける。
そして部屋の扉を開けてコンビニに向け出発した。
◆◇◆◇
「おはようございま〜す……」
朝10時、欠伸をしながら出勤する。
「あ、辰巳さん。おはようございます……」
そう言って俺を出迎えたのはバイトの同僚である川島桜。少し人見知りで驚くとその場にうずくまって動かなくなるダンゴムシのような癖がある。
「あぁ……おはよう。店長は?」
「て、店長ならバックヤードの方で怒鳴ってますよ……。在庫が何だとかで……」
露骨に嫌そうな顔をした。理由は……見たほうが早いだろう。
「分かった、ありがとう」
そうしてバックヤードに行くと案の定怒鳴り声が響いていた。
「あぁ! もう! なんで千のはずの在庫が万もあるんだよ! おっかしいだろうがぁぁぁぁあ!!」
中にいたのは酷い隈を目の下に作った長髪の男性。
彼がこのコンビニの店長であり2児の父、吉田輝明だ。
「おはようございます。相変わらず元気そうですね……」
「あぁ⁈ 辰巳! お前これからシフトだったか⁈」
軽く数日の間殆ど寝ていないのだろう。すでに2年間、同じ曜日同じ時間に来ている俺のシフトすらも忘れているらしい。
「良い加減休んでくださいよ。後で他の人たちも来ますから」
「だが店長がここで休、む……など……」
次の瞬間、店長は無言で椅子に座ってアイマスクをし、いびきをかいて寝始めた。
「全く……」
毎日この調子。気概も気合いもあるが子育てと店長業務の両立などできたものでは無い。
(それにしてもこの発注……ミカのせいだな?)
俺は目の前に積まれた予定の10倍の量があるドーナツを眺めていた。
発注の担当をしたのは大学2年生でありお調子者の時村ミカ。勘が良く、今日のようにやらかした事を察知すると……
(やっぱり……仮病か)
パソコンを開いてみるとそこにはミカからの休み連絡。こんな調子で休むこともしょっちゅうだ。
「まぁしょうがない……」
そうしてこの店は結局2人体制で回す事が当たり前となりつつあるのだ。
◆◇◆◇
俺は品出しや会計等を桜と分担しながら何とか店を回していた。
そうして俺がバックヤードで在庫の確認をしていると一羽の小鳥が壁をすり抜けて俺の肩に止まった。
「はぁ……誰からだ?」
俺は小鳥の足に掴まれていた紙を広げ、それを持つと紙が燃える。そして灰になった紙から金色の文字が浮かび上がった。
〈グランドマスターへの要請。シベリアの大地にて魔獣発生。現場では対応難あり。応援求む〉
そう浮かび上がった後に消えた。
(全く……面倒くせぇ……)
俺はその瞬間、腕と手を使って空中に陣を描き魔術を発動した。
「よし、俺のいない間の仕事。頼んだぞアルファ」
そして現れたのは俺そっくりの外見を持った等身大の人形。
「あア、まかセロ」
俺の出現させたゴーレムである「アルファ」。俺が出なければいけない時に変わり身として研究開発したものだ。
「さ、行こうか……」
そうして掌印を作る。そしてそれを左側から右側にゆっくりと動かした。
すると火花を放ちながら空間を切り裂きゲートが現れる。そして俺はそれを悠々と通った。
その先には驚くべき光景が広がっていた……。
さて、いかがでしたでしょうか?
本作は私の長編2作目になるものです。魔術の掌印が少しわかりにくいかもですが、イメージあれです。ドクター・ストレンジのやっているような感じです。
そんな感じで私自身も不安がてんこ盛りですが、精一杯頑張りますので応援よろしくお願いします。
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