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二人の侍女さんと


 たくさんのことをお話ししていると、なんとも素晴らしいタイミングで扉を叩く音が聞こえました。どうやら侍女の方がいらっしゃったようですね! ドキドキします・・・これからきっと長くお付き合いすることになるでしょうし、出来ることなら仲良くなりたいって思っちゃいますからね・・・! 

 そんな私の思いを悟ったのか、国王様は優しく微笑んでくださいました。どうしましょう、そんなに顔に出ていたんでしょうか。


「アリーシャ、緊張してるの? 大丈夫だよ、大人数にするとアリーシャが緊張しちゃうと思って、アリーシャと合いそうな二人だけを呼んだから、きっと仲良くなれるよ」


 なんていう国王様の言葉を聞いて、不思議と安心してしまいました。少し緩んでしまった顔を引き締めて、国王様に頷きます。もう大丈夫ですよ! 準備はバッチリです!



 そして国王様のどうぞ、というお声に合わせて開かれた扉から見えたのは、愛らしい雰囲気の方と少しきつめの印象の美人さん。目が合うと優しそうに細められたその瞳に、何か違和感を感じました・・・がまあ、気のせいですかね。誰かに似ていたのかもしれません。


「初めましてアリーシャ様、ニコです! 本日よりアリーシャ様の衣装を担当させていただきます!」

「初めまして、ニコ様。どうぞよろしくお願いしますね」

「は、はい! よろしくお願いいたしますっ」


 はじめに挨拶をしてくださったのは、愛らしい印象のニコ様。照れたように笑う仕草に、こちらまでつられて微笑んでしまいました。肩ほどで切りそろえられた髪がとても似合ってますよ!

 続いて目の前に現れたのは、もう一人の美人さん。すっと伸びた背筋が彼女の性格を表しているように思えて、とても好ましく思えました。


「お初にお目にかかりますアリーシャ様、メアリと申します。担当はありませんが、アリーシャ様が快適にお過ごし出来るように手助けいたします」

「初めまして、メアリ様。たくさん迷惑をかけてしまいそうですが、よろしくお願いしますね」

「よろしくお願いします。僭越ながらアリーシャ様、私どもに敬称をつけるのはおやめください」

「そうですか・・・では、メアリと呼ばせていただきます」


 そう言った私に軽く頭を下げたメアリ。一見人を寄せ付けない雰囲気でしたが、話してみると声色はとても穏やかで優しそうな方だとわかりました。国王様のおっしゃる通り、お二人ともとても優しそうですし、仲良くなれそうな気がします!


 あ、そういえば一つ気になることがあるのですが・・・ヘンリはどうなるんでしょう? 私の従者としてついてきてくれましたが、お城で別の方がついてくださるならヘンリがすることなんてないのでは・・・? いえ、私としてはそばにいてくれた方が嬉しいですよ。お城で過ごすことに不安だってありますし、幼い頃からそばにいてくれたヘンリがいるととても安心できるんです。でも、私にとってここでの生活に不安を感じるように、ヘンリだって家から離れることが不安ではないのかと心配で・・・お城での生活なんてきっと気が休まりませんよ! でも、もしヘンリが帰りたいと思っているなら止める気なんてありません。


「国王様」

「ん、どうしたのアリーシャ?」

「あの、ヘンリはどうするのですか?」

「ああ、大丈夫だよ。彼にはやってもらいたいことがあるから、そっちをお願いしようって思ってたんだ」

「ヘンリにしてもらいたいこと・・・ですか」


 何でしょう、気になりますね。でもヘンリなら並大抵の事はできるでしょうし、国王様直々のお願いでは断れませんよね。


「ね、ヘンリもそれでいいよね? まさかせっかくの侍女を差し置いてそばに仕えたいとか言わないよね!」

「・・・ええ、もちろんです、国王陛下」

「うんうんよかった。あ、そうだ二人とも、悪いんだけどアリーシャを部屋に案内してくれる? しばらくしたら迎えをよこすから、それまで自由に過ごしてくれて大丈夫だよ」

「かしこまりました。ではアリーシャ様、こちらになります」

「はい。では失礼しますね、国王様」

「またね、アリーシャ。すぐ迎えに行くよ!」



 ヘンリと離れることに不安はありますが、ニコもメアリもいますし大丈夫ですよね。ヘンリに向けて一瞬悪い笑みを浮かべたように見えた国王様ですが、きっと違いますよね? 私の勘違いですよね? 部屋を出る際にちらっと見えた程度でしたから、私の見間違いに違いありません。


「アリーシャ様、お部屋にご案内するのは私に任せてください!」


 部屋を出てそうおっしゃってくださったのは、目をキラキラと輝かせているニコさん。


「私、お城のことなら一番詳しいんです。お城に仕えてから今年でちょうど十年なんですよ!」

「ニコ」

「あ・・・ごめんなさい、メアリ様」

「アリーシャ様、今のことはお忘れください」

「…ええ、大丈夫ですよ」


 悲しそうに俯くニコと、警戒するように目を細めたメアリ。私には単に、十年もお城で過ごしているなんてすごい、という思いしかありませんが、二人がそういうなら聞かなかったことにしましょう。せっかく仲良くなれそうだと思ったのに、わざわざこちらから嫌われそうなことなんてしたくありませんしね。

でも隠す理由は、少し気になっちゃいますよね・・・。


 


 それから気まずくなったのか、私たち三人は一言も発することなく部屋にたどり着きました。これから私の部屋になるそれはなぜかピンク系統が多く、さらに言えばフリルやレースの多い何とも言えないものでしたが、気にしないことにしました、ということだけお伝えしておきます。


 ちなみにピンクより白の方が好きだということは黙っておいた方が良さそうですね・・・お部屋の家具を選んでくださった方に悪いですし、家具は後々私好みのものを集めていけばいいですからね!





 

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