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第6話 ウブロ家の没落

「アイリスホテルは、5年前に経営者が破産して売りに出されたズラ」


 デートから帰ったケイトはケント王子に戻って、吉音にホテルのことを調べさせた。

 吉音はカリフの商工会や町の噂をでいろいろ調べて、報告してきた。


 アイリスホテルは代々ウブロ家が経営してきた。

 ウブロ家は貴族ではないが昔からカリフの経済界で活躍してきた古くからの商人の家系であった。

 その経営方針は堅実で派手さがなく、創業150年と言われるアイリスホテルの経営を確実にしてきた。


 アイリスホテルはそのサービスの良さと風光明媚な立地、そしてカリフの食材をふんだんに使った料理で、カリフだけでなく外国からの金持ちに愛されて繁盛してきた。

 

 しかし、経営が傾きだしたのは15年前。カリフの発展と共に宿泊施設が乱立。競争が激しくなった。

 ちょうどその頃、ホテルの建物の大規模修繕が必要となり、まとまった資金が必要であった。


「そこで持ち上がったのがパープルトン伯爵家の次男との結婚話ズラ」


 吉音はウブロ家の没落の話をし始めた。

 アイリスホテルを経営するウブロ家には、男の跡継ぎがいなく娘が一人だけいた。

 レイラという名前だ。

 当時は20歳。この世界では嫁に行くのが遅れた年であったが、それは本人が頑なに結婚を拒んだからと噂されていた。

 

 理由は分からない。しかし、資金難に陥ったアイリスホテルを救うために、資産家とされるパープルトン伯爵家の次男との結婚を承諾する。


 しかしそれが罠であった。


 パープルトン伯爵家の内情は穀物の投機で破産状態であり、次男をアイリスホテルの経営者にすることで、多額の借金をアイリスホテルとウブロ家に保証させることで生き延びようとしたのだ。

 経営が傾いているとはいえ、ホテルの建物および広大な敷地の価値は相当なもので、さらにウブロ家の財産もあった。


 パープルトン伯爵家はこれを質に入れて逆転を狙おうと投機で勝負した。そして結果は破滅。巻き込まれたウブロ家は全財産を失った。


 レイラが結婚した次男は、結婚生活1年で外国へ逃亡。パープルトン伯爵家の人々は自殺したり、国外へ逃亡したりしたという。


 財産を失ったウブロ家の人々も同様であったと言う。


「そうか……立て直しを図って沈没する船に乗るような政略結婚をしたか」


 ケントは吉音の話を聞いて哀れんだ。しかしウブロ家も迂闊である。相手のことをよく調べず、口車に乗って破滅したのだ。


 儲かると言う話に乗って全財産を失った馬鹿な人間と同じである。たぶん、その程度の能力しかなかったから、ホテル経営が傾いたのだと思う。


「それで聞いたズラが、そのレイラとかいう娘。今はカリフで小さな宿屋をやっていると聞いたズラ」


「ほう……そうなのか」


 吉音の話を聞いて、これはバーモントが食いつきそうだとケントは考えた。

 話を整理するとバーモントは、元仕えていたウブロ家に恩を感じており、さらにこれは推測であるが、レイラと言う娘にバーモントは何らかのかかわりがあると考えたのだ。


 15年前だとすると当時はバーモントは28歳。レイラは20歳。バーモントはレイラの結婚前後にホテルの料理人を辞めて兵士に志願。様々な戦場を巡ってカリフから離れる。


 5年前に一時、カリフに来たことはあるが短期間でホテルのことなど知ることもなかった。


「これは何かあるな……」

「主様、早く白馬の王子様のことを聞くズラ。関わってもろくなことがないズラ」


 そう吉音は言ったがケントには実は別の思惑があった。


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